9月3日

9月4日

9月5日

1. ◎超特異性判定アルゴリズムの効率化とその暗号応用 / ○橋本 侑知 (東京大学), 高島 克幸 (三菱電機　情報技術総合研究所) [概要]

   超特異楕円曲線間の同種写像を用いた暗号は耐量子暗号として期待されており、DH 型鍵共有（SIDH: Supersingular Isogeny Diffie-Hellman）、認証・署名、ハッシュ関数等が研究されている。それら暗号系を構成するためには、楕円曲線の超特異性判定アルゴリズムが必要である。Sutherland の超特異性判定アルゴリズムでは、同種写像グラフの特性が巧みに用いられる。我々は、そのアルゴリズムに、吉田-高島により提案された2-同種写像列計算の効率化手法を適用して効率化を図る。そして、Sutherlandアルゴリズムとの計算量比較を行う。

2. ◎同種写像問題に対する代数的求解法の解析と計算量評価 / 高橋 康 (富士通研究所), ○工藤 桃成 (神戸市立工業高等専門学校), 池松 泰彦 (九州大学マス・フォア・インダストリ研究所), 安田 雅哉 (九州大学マス・フォア・インダストリ研究所), 横山 和弘 (立教大学) [概要]

   同種写像暗号とは，楕円曲線間の同種写像計算問題の困難性に安全性の根拠を置く暗号方式であり，耐量子暗号候補として期待されている。高橋らはSCIS2019において，同種写像問題を代数方程式系の求解に帰着させ，モジュラー多項式を利用した2分割求解法と，Velu公式・核多項式を利用した求解法を提案した。一方で，グレブナー基底計算などを用いていることから，その計算量評価が困難であった。そこで本講演では，高橋らの求解法において現れるイデアルの構造などを明らかにすることで，漸近計算量を厳密に評価することに成功したので，これを紹介する。さらに，2分割法の改良である3分割法を紹介し，今後期待できる高速化の見通しを述べる。

3. ◎同種写像暗号CSIDHのEdwards曲線による構成について / ○守谷 共起 (東京大学大学院情報理工学系研究科 修士2年), 小貫 啓史 (東京大学大学院情報理工学系研究科 特任研究員), 高木 剛 (東京大学大学院情報理工学系研究科 教授) [概要]

   同種写像暗号CSIDHは耐量子暗号の候補の一つであり，超特異楕円曲線の同型類に対するイデアル類群の自由で推移的な作用により構成される．イデアル類群の作用の計算には，同種写像の核となる2次拡大体上で定義される点が必要となる．CSIDHは，Montgomery曲線を用いてこれらの点を素体の元で表示することにより，暗号演算の高速化を実現している．一方，楕円曲線暗号の高速化で利用されるEdwards曲線により類似の表示を試みた場合，4次拡大体上で定義される点まで考慮する必要があり，その表示から核となる点を素体上の演算のみで得ることは自明ではない．本講演では，Edwards曲線を用いたCSIDHを素体上の演算だけで実現する方法について述べる．

4. IoTデバイス上のRing-LWE暗号実装における考察 / 武田 岬 (NEC通信システム), ○田中 覚 (東京都立産業技術高等専門学校), 布田 裕一 (東京工科大学) [概要]

   耐量子暗号方式であるRing-LWE暗号は, 安全性・実用性のバランスのとれた有望な方式として近年注目を集めている. Ring-LWE暗号では多項式同士の乗算が必要であり, この計算が暗号化・復号処理における計算量の大部分を占めている. 一方で, 計算資源が限られているIoTデバイスでにRing-LWE暗号を活用するには, 高速かつ省メモリな乗算アルゴリズムが必要不可欠である. 本研究では多項式における乗算アルゴリズムの検討を行い, IoTデバイス上に乗算アルゴリズム別でRing-LWE暗号を実装した結果について紹介する.

1. 直交選点有限要素法による非定常２基質制限移流拡散反応方程式(生物膜モデル)の定式化と基質消費およびフラックスの計算 / ○大久保 孝樹 (函館高専　社会基盤工学科) [概要]

   非定常２基質制限移流拡散反応方程式を直交選点有限要素法によって定式化し、濃度分布の計算結果を用いて、数値積分である基質消費とフラックスの計算を行った。直交選点有限要素法では、空間と時間をそれぞれ空間の微分作用素行列と時間の微分作用素行列を用いて定式化する。強形式の偏微分方程式の偏微分を微分作用素行列に置き換えることで定式化することが可能である。選点がガウスの積分点と同じであるので、数値積分が正確にできる。

2. ◎$N$次元半線形熱方程式の球対称解に対する新しい質量集中型有限要素近似 / ○中西 徹 (東京大学大学院数理科学研究科), 齊藤 宣一 (東京大学大学院数理科学研究科) [概要]

   本講演では、高次元半線形熱方程式の球対称解に対する集中質量型有限要素スキームを提案する。通常、集中質量作用素を用いてP0有限要素空間へ射影するが、今回はこの作用素を用いない新しい集中質量型有限要素スキームを考える。このスキームに対して、正値性の保存や誤差評価を証明する。とくに、標準的有限要素スキームにおけるいくつかの弱点を克服できていることを示す。さらに、爆発時刻への収束を考察する。

3. ◎一般化Robin境界条件に対する不連続Galerkin法 / ○千葉 悠喜 (東京大学大学院数理科学研究科) [概要]

   現象のシミュレーションを行うにあたって，動的境界条件や一般化Robin境界条件といった，複雑な境界条件を持つ方程式に対する数値計算手法の提案と解析は重要である． これに関する不連続Galerkin(DG)法の過去の研究はいくつかあるが，領域の形状に制限があり現実の問題への応用が難しい一因となっている． 本研究は，滑らかな領域上の一般化Robin境界条件を持つPoisson方程式に対し，DG法の適用とその解析を行う．

4. ◎軸対称液滴シミュレーションにおけるメッシュ制御への信号処理的方法 / ○古賀 一基 (京都大学) [概要]

   本講演では、非粘性軸対称液滴運動の境界積分方程式による定式化を考え、その解に現れる曲率爆発を検出可能な信号処理に基づくメッシュ制御法を提案する。また、そのスキームの収束性および効率性について議論し、いくつかの具体的なシミュレーション結果を紹介する。

1. 平坦時空におけるEinstein方程式の2次摂動の数値計算 / ○土屋 拓也 (八戸工業大学), 米田 元 (早稲田大学) [概要]

   Einstein方程式は一般相対性理論における支配方程式の1つであり, 宇宙の様々な 現象を表す方程式である. この方程式は連立非線形偏微分方程式であり, その解を求めることは簡単ではない. 今回この方程式の厳密解からの摂動を考え, その摂動方程式を解析することで Einstein方程式の解の調査を行う. 厳密解として最も簡単な平坦時空(Minkowski時空)を用いることにする.

2. 相対論的天体力学の１体問題に関するある近似解法 / ○鈴木 隆治 (浜松市天文台宇宙論勉強会) [概要]

   ブラック・ホールのまわりの小天体の運動解析は、Newtonの万有引ひ力の法則の、相対論的な補正を要請する。その上で、小天体が、擬楕円軌道を描く場合、その近似解は、一般相対論的天体力学のNewton古典天体力学からの補正という観点から、構成することが可能であり、1931年に発見された数理天文学者・萩原雄佑博士のWeierstrassの楕円関数を用いた厳密解を使わなくても、軌道計算に、良い近似を与えることが期待される。Schwarzschild時空は、可積分系であり、自然落下が、積分法で解析できる。また、この小論で提唱する近似解法（アルゴリズム)で、例えば、1916年にアインシュタインが予言した、「水星の近日点の前進」が説明できるだけでなく、地球の時刻でみたブラック・ホールまわりの小天体（恒星)の位置計算も可能である。この近似計算では、Keplerの第２、第３法則は、成り立っていることが示せる。また、第１小天体が、ブラック・ホールのまわりを等速円運動しているとき、この小天体からの摂動力を受ける第2小天体の軌道計算も、近似的に可能と期待され、現在、この近似計算の厳密解からの誤差解析が、研究中の段階にある。

3. 漸化式による常微分方程式のTaylor級数解による数値解法の性能 / ○平山 弘 (神奈川工科大学) [概要]

   常微分方程式のTaylor級数の係数は漸化式の計算によって効率的に計算できる。この級数を使えば、常微分方程式を高次の数値解法を得ることができる。Taylor級数解であるから自動的にRung-Kuttaの埋め込み型公式となり、途中で級数を打ち切れば、自動的に低次の級数解が得られる。これらの複数の次数の解を使えば、効率的に刻み幅を計算できる。この計算法の性能について述べる。

1. ◎ねじり折りの剛体可折性とねじり折りを用いた剛体平織りの数え上げ / ○諌山 博人 (九州大学大学院数理学府), 川崎 英文 (九州大学大学院数理学研究院) [概要]

   凸n角形周りのねじり折りで，n角形の辺すべてを谷折りしたものをV^nねじり折りとよぶ．本発表では，最初にV^nねじり折りが剛体折り不可能であることを示す．次に，正方形周りのねじり折りで，正方形の辺のうちk本を谷折りし，4-k本を山折りしたものをV^kM^{4-k}ねじり折りとよぶ．そのようなねじり折りを複数個並べた平織りのうち，剛体可折なものを数え上げる．

2. ◎表裏対称な折り紙を対象とした単一視点形状モデリング / ○加藤 優弥 (筑波大学), 金森 由博 (筑波大学), 三谷 純 (筑波大学) [概要]

   従来のソフトウェアを用いて折り紙形状をモデル化することは困難であった。本研究では、正確な内部構造を省略しながらそれらしい外見を持つ折り紙モデルを生成するシステムを提案する。対象とする折り紙形状を平坦に折りたため、表裏対称であるものに限定することで、単一視点による簡易で素早いモデリングが可能となる。最後に、本システムと従来のシステムで生成されたモデルの比較やユーザテストの結果も行う。

3. 紙材料モデルを用いた折紙形状の折りたたみシミュレーション / ○戸倉 直 (トクラシミュレーションリサーチ) [概要]

   折紙の応用研究において、有限要素法を用いた紙製折紙の折りたたみ過程の数値シミュレーションが行われ、折りたたみ挙動や折りたたみ時の反力の予測に用いられている。しかし紙の物性を正確にモデル化することは一般に難しいため、多くの場合は弾性体で模擬されている。しかし正確な反力を予測するためには実際の紙の物性を模擬した材料モデルを用いる必要がある。本研究では異方性構成式でモデル化した折紙モデルの折りたたみ挙動のシミュレーションを紹介する。

4. ◎平織りの技法を用いた伸縮可能な構造の提案 / ○山本 陽平 (筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻　計算幾何学とグラフィックス研究室), 金森 由博 (筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻　計算幾何学とグラフィックス研究室), 三谷 純 (筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻　計算幾何学とグラフィックス研究室) [概要]

   折り紙の工学的に有用な特徴として，「折り目を与えることでフレキシブルに収縮・展開する構造」を作れる点が上げられる．本研究では，折り紙の技法である平織りに着目する．平織りは，平坦に折りたたまれた紙の重なりで模様を表現する．一方，一部の平織りは平面の方向に伸縮しやすい特徴を持つことを発見した．本発表では，発見した平織りのパターンを用いた，新たな伸縮可能な平面の構造といくつかの作例を紹介する．

1. 参議院選挙区にみる閾値と偏りの関係 / ○諸星 穂積 (政策研究大学院大学) [概要]

   選挙区への議席配分は人口に比例して行うのが原則だが，ある選挙区の人口が少なかったとしても最低１議席は配分することが必要であろう．この最低数のことを閾値という．閾値は人口に比例するという原則に対して，なんらかの偏りを生じさせる可能性がある．参議院の場合に閾値は２であるので，この偏りはより大きいと考えられる．過去のデータとシミュレーションから，閾値と偏りの関係について考察する．

2. 研究開発投資の「選択と集中」について / 石井 良輔 (帝京大学), ○中川 訓範 (静岡大学) [概要]

   本研究では、政府による研究投資に関する意思決定について、空間競争モデルを拡張したモデルによって考察する。空間競争モデルを利用する利点は、投資する対象となる研究の多様性が均衡においてどのようになるかを明示的に分析可能となることである。具体的には、政府が提案された研究プロジェクトに対して選択と集中を行なう際に、その選択と集中の度合いについて明示的に考察可能となる。本研究のモデルにおいて、研究プロジェクトが提案されたあとに、政府は彼ら自身に役立つ研究がわからない事前とわかったあとの事後の２回の投資機会を持つ。このモデルにおいて、投資する研究の対象数とその偏りについて考察する。サブゲーム完全均衡において、役立つ研究がわからない事前の段階に政府はなるべく多くの研究分野に投資を行ない、さらに、その際にはその分野の選択と集中を行なわないことを示した。

3. オンライン上の情報伝播シミュレーションと再現性向上のための拡張 / ○竹内 謙太郎 (静岡大学) [概要]

   本研究は、解決すべき社会問題の一つである誤情報伝播に対して、確実な対抗策を生み出すことが出来るように現実世界を忠実に表現したモデルを提案し、この状況を打開する手がかりを見つけることを目的としている。誤情報伝播を再現する準備として、情報伝播のネットワークモデルをVicarioらによる先行研究を元にいくつかの拡張を行った。複数の拡張に伴い、シミュレーション結果にどのような影響を与えるかを調べ、再現性向上においてどのような拡張をしていくべきなのかを検討する。

1. 偶数位数を持つ有限体上楕円曲線の2次の指標 / ○白勢 政明 (公立はこだて未来大学) [概要]

   qを奇素数pのべき、E/Fqを#E(Fq)が偶数の楕円曲線とする。この時、準同型写像 phi:E(Fq)->{1,-1} をLegendre記号とノルムを使って定義できることを示す。ある意味phiはE(Fq)の2次の指標である。

2. 互いに3-同種な楕円曲線から定まる直積型クンマー曲面上の楕円曲線束について / ○内海 和樹 (立命館大学) [概要]

   本講演では3-同種な2つの楕円曲線から定まる直積型クンマー曲面上のある楕円曲線束に対し，そのモーデル・ヴェイユ格子の生成元を有理点として具体的に書き下す方法について述べる．一般に，楕円曲線間の同種写像のグラフから定まる直積型クンマー曲面上の因子を記述するのは関数体係数代数方程式の解を扱うことになるので難しい．2つ楕円曲線が3-同種な場合はそのような代数方程式を解かずに因子をうまく扱えるのでそれを紹介する．

3. ◎円分関数体の相対類数の行列式公式にあらわれる行列式の値の大きさについて / ○青山 大輝 (富山大学大学院理工学教育部), 木村 巌 (富山大学大学院理工学研究部) [概要]

   円分体の相対類数の或る行列式公式にあらわれる行列式は，±1行列の行列式だが， 同じ次数の±1行列の中で目立って巨大な絶対値を持つことが谷口哲也氏（金沢工大）により指摘されている． 我々は同様の考察を，円分関数体の相対類数の或る行列式公式の場合に行った． 結果として，標数が小さい場合は同様の傾向が見られること，一方，標数が大きい場合には異なる傾向が見られることを数値的に観察した． これに関連して得られた結果，ならびに応用の可能性について報告する．

4. 正則連分数展開に基づく短い周期のTausworthe発生法 / ○原瀬 晋 (立命館大学理工学部) [概要]

   MCMC法を用いた期待値計算に対して、乱数を準乱数に置き換えて、収束性の向上を図りたい。しかし、通常の準乱数は、そのまま適用することが出来ない。近年、CUD列を用いると、期待値の一致性が示されたが、その定義は構成的でない。本講演では、Tausworthe発生法に着目し、パラメータとなる二元体上の多項式の組について、正則連分数展開の観点から最適化を行い、CUD近似点集合を得る方法を紹介する。

1. ◎有限要素解の局所事後誤差評価と応用について / ○中野 泰河 (新潟大学大学院　自然科学研究科), 劉 雪峰 (新潟大学大学院　自然科学研究科) [概要]

   本研究では3次元領域で定義されるPoisson方程式の有限要素解に対して，Hypercircle法を利用することで，関心のある領域上における定量的な事後誤差評価手法を提案する． 当該手法の応用例として，Laplace方程式の有限要素解に対して，最大値ノルムによる定量的な局所誤差評価手法を検討し，数値例を紹介する．

2. Error analysis of Crouzeix-Raviart finite element method without the shape regularity condition / ○石坂 宏樹 (愛媛大理工), 土屋 卓也 (愛媛大理工) [概要]

   We present an error analysis of piecewise linear nonconforming Crouzeix–Raviart finite element method (CR FEM) for the Poisson problem in 3dim without the shape regularity condition. First, we show that in this case, Crouzeix–Raviart finite element method is equivalent to the lowest order Raviart–Thomas finite element method (RT FEM). Next, using the Babuska–Aziz technique, we present error estimates of RT interpolation. Since RT FEM is confirming, a Cea type lemma is valid and error estimates of RT FEM are obtained from that of RT interpolation. Using the obtained equivalence of CR and RT FEMs, we finally present the targeted error estimates of CR FEM. We again emphasise that we do not impose the shape-regular condition for the mesh partition.

3. 創成解による板・シェル問題の妥当性確認 / ○山田 貴博 (横浜国立大学) [概要]

   板およびシェルの問題は，様々な分野で用いられている薄肉構造に対する応力解析で現れる．その際には，Kirchhoff-Loveの仮定に基づく板・シェルを記述する方程式が用いられるが，その適用範囲については数値計算結果から判断されることが多く，より理論的な指標が必要であると考える．そこで本研究では，板・シェルの解析解を3次元連続体に対する創成解として適用することで，板・シェルの問題と連続体の関係およびその適用範囲を考察する．

4. 非同次項を持つ２階線形常微分方程式の固有値問題の数値解法 / ○石川 英明 (なし) [概要]

   非同次項を持つ２階線形常微分方程式の固有値問題に対する新しい数値解法を述べる。この型の微分方程式は、原子構造計算におけるFock方程式の雛形となっている。Fock方程式は、我々がこれまで高精度数値解法を発展させてきた、非同次項がないHartree方程式の拡張となっている。

1. スマートコントラクト：金融工学の観点からの課題【30分】 / ○関根 順 (大阪大学大学院基礎工学研究科) [概要]

   電子化された現金や株式に関する金融商品の「スマートコントラクト化」を念頭に置いて、金融工学の手法を用いて金融商品の価値評価やリスク評価がどのように行われているかを概説する。特に、デリバティブ取引のスマートコントラクト化における課題やチャレンジを、近年出つつあるワーキングペーパー(Fries et al., 2019など)を参照しながら論じる。

2. 暗号学と金融工学の融合とその社会実装について【30分】 / ○桑原 一郎 (Crypto Garage) [概要]

   ブロックチェーンベースの暗号学及びビットコイン上のスマートコントラクトの金融工学への応用について紹介する。

3. トークナイゼーションのモデル化に関する一考察 / ○佐古 和恵 (ＮＥＣ), 福岡 俊樹 (Crypto Garage/ FINPLANET), 桑原 一郎 (Crypto Garage) [概要]

   金融分野における「株」や「債券」をはじめ、さまざまなアセットがブロックチェーン上でトークン化され、取引されている。それぞれのアセットはそもそもどういう用途があり、どのようなセキュリティ要件を満たすことが期待されているのか。ひとつひとつのケースにおいて「トークン」をモデル化し、目的に応じた性格の比較を行う。

1. ◎曲線折りを含む展開図からの3次元形状復元を目的としたRuling配置の推定 / ○佐々木 好祐 (筑波大学), 金森 由博 (筑波大学), 三谷 純 (筑波大学) [概要]

   展開図から折った後の形を生成する方法の１つにOrigami Simulatorを用いたシミュレーションがあるが，これは直線での折りにしか対応していない．本研究ではOrigami Simulatorを用いて曲線の折りを含む折り紙のシミュレートを近似的に実現することを目的とする．提案手法では，Rulingの性質と曲げエネルギーを用いて推定したRulingを折り目として使用し曲面の近似表現を行う．

2. 折紙工法で得られる輸送箱の振動遮断に関する検討 / ○阿部 綾 (明治大学), 崎谷 明恵 (明治大学), 屋代 春樹 (明治大学), 寺田 耕輔 (奈良工業高等専門学校), 萩原 一郎 (明治大学) [概要]

   多様な観点から見て「イチゴ」、「卵」それぞれに最適な輸送箱を開発・提供し、最終的には細胞や血液の輸送箱の可能性についても検討する。最初のステップとして、充填強化蓋に最適な設計をすることで、イチゴを輸送する時に極力避けたい固有周波数帯域を避けることを試みる。さらに次のステップとして、卵について検討を行う。

3. 美しく折畳めスプリングバックしないペットボトルの開発 / ○楊 陽 (明治大学), 陳 暁詩 (明治大学), 奈良 知恵 (明治大学), 萩原 一郎 (明治大学) [概要]

   空ペットボトルの折畳は、折紙工学誕生の2002年以来多くで試みられているが未だに成功していない。これは紙と異なりペット材などでは美しく容易に折りたたまれる程、スプリングバックが大きく元の長さに戻ってしまう問題がある。そこで螺旋を設けて折畳み部分と円筒の非折畳部分を設け更にその間に溝を設けて折畳み部分を、溝を通して非折畳部分に封じ込める設計仕様とした。これにより所期の美しく容易に折畳めスプリングバックが生じないペットボトルの開発を得た。

1. 機械学習による設計探査技術の開発【16分】 / ○片岡 一朗 (日立製作所), 野中 紀彦 (日立製作所) [概要]

   製品開発においては，顧客要求に見合った製品の設計案を早く見積もることが求められている。製品開発を顧客と協創しながら進めていくプロセスにおいて，顧客から提示されたスペックに見合う製品設計案を，シミュレーションデータと機械学習を活用し短時間で予測する技術を開発したので，報告する。

2. 機械学習による構造解析のためのデータ設計【16分】 / ○和田 義孝 (近畿大学) [概要]

   機械学習を援用して解析時間を削減する試みが多くの研究分野において進められている。実際はどのようなデータを準備してどのように学習させればよいか依然不明瞭なままである。特に、材料設計や数値流体力学の分野ではそもそも膨大なデータを扱うため機械学習との親和性が良い事例が多く報告されている。本研究では、構造解析の代替モデルを作るために必要な学習データに対する要件を検討する。

3. 図形処理における近似算法による構造厳密性の保証【16分】 / ○今井 敏行 (和歌山大学システム工学部) [概要]

   図形処理において，図形の構造情報を求める事に特化して，近似算法でも厳密性が確保する枠組みを提案する．要所以外では必要な近似精度も低い．計量情報は後から必要に応じて求めることで，精度と速度を両立できる．

4. CGの形状操作技術を利用した有限要素メッシュの変形【16分】 / ○松本 隆希 (立命館大学), 小林 美蘭 (立命館大学), 藤田 宜久 (立命館大学), 仲田 晋 (立命館大学) [概要]

   ある形状の有限要素メッシュを他の形状に転写する問題は人体の姿勢・体形変更などの状況でしばしば登場する．我々はCGの高速変形技術でこの問題の解決を試みる．具体的には制御点に基づいて形状を操作するAs-rigid-as-possible shape manipulation法，およびメッシュの節点・辺・要素に制約条件を与えることで形状変形を制御するPosition-based dynamics法をメッシュ転写の問題に応用し，転写されたメッシュ品質と転写速度の観点で有用性を評価する．

5. 交通シミュレーションの機械学習【16分】 / ○山田 知典 (東京大学) [概要]

   工学領域におけるシミュレーション結果群の機械学習を検討するため、特殊な状況下での交通流を想定し、深層学習モデルによる交通流予測を行った。交通事故が発生したシナリオでのシミュレーションデータを多数作成し、グラフ畳み込みと交通事故情報の特徴量の入力を伴う深層学習モデルにより交通流予測を行った。他の様々なモデルと予測精度を比較し、提案モデルの有効性を検証した。

1. ◎エボラ病数理モデルにおける確率最適制御 / ○加藤 京士 (東京工業大学情報理工学院数理計算科学系) [概要]

   エボラ出血熱は致死率の高さと感染力の強さから危険度の高い感染症として知られる。2014年には西アフリカで大規模流行、2018年にはコンゴで感染が拡大し、今なお対策が求められている。 同病について確率論数理モデルを新たに提案し、理論的な分析・検討を行う。その後、流行への予防対策を確率最適制御問題として扱い、最適なワクチン戦略を数値実験により導く。

2. ◎Comparison of the deterministic and stochastic models of data-diffusion / ○Watanabe Itsuki (Waseda University) [概要]

   We discuss the difference of two mathematical models of data-diffusion; the deterministic and stochastic models. The deterministic model is given by a partial differential equation, and the stochastic model is given by a multi-dimensional jump Markov process. Blount compare the solution of heat equation with periodic boundary condition and Markov model for random walk on discrete torus that can move only left and right cell by the law of large numbers and the central limit theorem. In this talk, we focus on the two data-diffusion models on torus. By the law of large numbers and the central limit theorem, we show that the difference of two models converges to 0 in probability and a Gaussian process represented by a mild solution of a certain stochastic differential equation, respectively.

3. ゲル基質上の上皮細胞シートが引き起こす浸透圧勾配依存的なドーム形成とその数理モデル / ○秋山 正和 (明治大学・先端数理科学インスティテュート), 石原（石田） すみれ (北海道大学・大学院先端生命科学研究院・細胞ダイナミクス科学研究室), 須志田 隆道 (サレジオ工業高等専門学校・情報工学科), 古澤 和也 (福井工業大学・環境情報学部・環境・食品科学科), 名黒 功 (東京大学・大学院薬学系研究科・細胞情報学教室), 立野 浩輝 (東京大学・大学院薬学系研究科・細胞情報学教室), 芳賀 永 (北海道大学・大学院先端生命科学研究院・細胞ダイナミクス科学研究室) [概要]

   動物の複雑な体構造は，上皮組織の座屈や折れ曲がり，伸長といった単純な変形が積み重なることにより形成される．上皮組織が折れ曲がる変形のひとつにドーム形成があるが，そのような形態を引き起こす要因はほとんど分かっていない．上皮組織上下の浸透圧勾配がドーム形成の要因として提唱されているもののその直接的証拠は報告されていない．そこで我々は浸透圧勾配によってどのようにドーム形成が誘引されるかについてを実験的・数理的に研究した．

4. 温度変化に対する体内時計の安定化と波形の歪みについての数理的研究 / ○儀保 伸吾 (理化学研究所数理創造プログラム), 黒澤 元 (理化学研究所数理創造プログラム) [概要]

   体内時計は複雑な生化学反応ネットワークによって構成される。多くの生化学反応は温度が上がると早く進むが、体内時計の周期は温度によらず約24時間である。本研究では、体内時計の数理モデルの周期の厳密解を導出し、体内時計の周期が温度によらず一定であるためには、高温で生体分子の振動波形が歪む必要があることを明らかにした。さらに、電気振動のモデルなどでも同様に波形の歪みが周期を制御することを示した。

1. カンファレンス行列を使った実験数を圧倒的に低減する研究方法 / ○森 輝雄 (森技術士事務所) [概要]

   　ここ30年間、設計に田口の「L18+SN比」を適用していたが実験数が多いことと予測精度がよくないことが知られるようになった。これに代わるプラットホームとして「確かな少数実験法」を実現する「C行列+回帰」の可能性を取り上げてきた。カンファレンス行列は、主効果に「積項と2次項」が交絡しない性質があるために予測精度が高い。また現状ではL9,L18.L27.L36のように９とびであるがC行列は、割り付け因子数の2個増毎に対応しており実験数を低減できる。

2. ◎時間発展方程式を用いたトポロジー最適化 / ○村井 大介 (株式会社　豊田中央研究所), 川本 敦史 (株式会社　豊田中央研究所), 近藤 継男 (株式会社　豊田中央研究所) [概要]

   時間発展方程式を用いて、トポロジー最適化問題に対する解法を提案するとともに、提案法を用いて、体積制約条件下での平均コンプライアンス最小化問題の数値解を求めた。また提案法は、等式制約条件下で目的関数を減少させることを示した。

3. 自動車のシャシー用部品を対象としたひずみエネルギー最小化問題に対するトポロジー最適化解析 / ○岸田 真幸 (長岡技術科学大学技術科学イノベーション専攻), 嶋田 雅也 (長岡技術科学大学機械創造工学課程), 高橋 陽也 (長岡技術科学大学機械創造工学専攻), 吉原 健太 (長岡技術科学大学機械創造工学専攻), 倉橋 貴彦 (長岡技術科学大学機械創造工学専攻), 加藤 遼 (オイレス工業株式会社), 小林 正成 (オイレス工業株式会社) [概要]

   本研究では，トポロジー最適化理論に基づき自動車のシャシー用部品を対象としたひずみエネルギー最小化とする最適化設計を行う．手法として，SIMP法を用い正規化された密度を要素に与え，最適性基準法を用いて正規化された密度の更新を行い構造の最適化を行う．

4. 高精度逆問題解析に援用可能な波動方程式の順問題に対する直接的数値解法の開発 / ○代田 健二 (愛知県立大学), 曽我部 知広 (名古屋大学) [概要]

   本発表では，波動方程式族の逆問題に対する高精度数値的再構成法開発の基礎研究として，スカラー波動方程式の初期値境界値問題に対する直接的数値解法について考察する．離散化手法として，空間方向には差分法を，時間方向には Gauss-Lobatto 選点を用いたスペクトル選点法を採用する．それら離散化手法により得られたテンソル積構造係数行列を持つ連立一次方程式に対して，係数行列の構造を保持したまま実行可能なテンソル積 BiCG 系解法を導出し，それにより従来の数値積分法とは異なる直接的数値解法を実現する．幾つかの例題について，多倍長計算ライブラリexflib を用いた数値実験を実施し，開発手法の有効性について検証する．

1. ◎F4-styleアルゴリズムを基にしたMQ問題の求解 / ○伊藤 琢真 (情報通信研究機構 / 首都大学東京大学院博士1年), 篠原 直行 (情報通信研究機構), 内山 成憲 (首都大学東京) [概要]

   多変数公開鍵暗号(MPKC)は耐量子計算機暗号の候補の1つである。連立多変数代数方程式で全次数が2である問題はMQ問題と呼ばれ、それを解く計算の困難性がMPKCの安全性の根拠とされている。その安全性を評価するためにMQ問題を解く国際コンテストFukuoka MQ Challenge が開かれている。MQ問題を効率よく解く方法の1つとしてグレブナ基底を求める方法があり、代表的なアルゴリズムとしてF4-styleやM4GBがある。ここでは、F4-styleアルゴリズムを基にしたMQ問題を効率よく解く手法として、S多項式の中で不要なものを確率的に排除する方法やS多項式の新しい選び方を提案し、その効果について考察する。また、MQ Challenge への提案手法の適用についても述べる。

1. ◎双対性による関数近似公式および数値積分公式の収束解析 / ○早川 知志 (東京大学), 田中 健一郎 (東京大学) [概要]

   重み付きHardy空間上での関数近似問題について、田中・杉原が2018年に提案し、実験的優位性を確認していた手法の理論解析を行う。解析過程にはBorel測度に対する最適化問題の双対問題を取ることで収束オーダーの上界を与えるという真新しい方法を含む。また、その評価により得られる、積分近似問題に対する類似の手法の収束レートの上界についても紹介する。

2. p乗根の合成有理関数による二重指数関数近似 / Gawlik Evan S (ハワイ大学マノア校), ○中務 佑治 (オックスフォード大学、国立情報学研究所) [概要]

   p乗根x^(1/p)が[0,1]上で2乗根指数関数exp(-C\\\\\\\\sqrt{n})の精度で近似できるという有理関数近似論の古典的結果がある．ここではr_k(…r_2(r_1))の形をした合成有理関数に着目する．同型の有理関数よりも遥かに狭い関数クラスだが、少ないパラメータで高い型の有理関数を表現でき、Zolotarev関数等、最良近似有理関数を含む場合もある． 本研究ではp乗根を合成有理関数で構成的に近似し、型に関しては約p乗根指数関数的、またパラメータ数に関して二重指数関数的に収束することを示す．

3. 振動積分に対する佐藤超函数論に基づく数値計算法 / ○緒方 秀教 (電気通信大学大学院情報理工学研究科情報・ネットワーク工学専攻) [概要]

   本公演では、振動積分に対する佐藤超函数論に基づく数値計算法を提案する。無限区間上の振動関数の数値積分は、DE公式など従来の数値積分公式では計算が困難である。これに対し、Fourier-Laplace変換で定義された上半平面上の解析関数を求め、これを実軸上に解析接続することにより、振動関数の積分値を求める方法を提案する。半平面上の解析関数の実軸への解析接続、すなわち、実軸上の境界値は「佐藤超函数」と呼ばれるものに相当し、その意味で、本件方法は佐藤超函数論に基づく振動積分の数値計算法と見なすことができる。

4. シンプレクティック数値積分法とリュービルの定理 / ○佐々 成正 (原子力機構) [概要]

   シンプレクティック数値積分法はハミルトン 系における正準変換として定義される。その ため、シンプレクティック数値積分法を用い た時間発展において、相空間内の面積和や体 積和に対する保存則が実は踏襲されている。 相空間の総体積保存をリュービルの定理と呼 んでいるが、これが実際の数値計算において も成り立っていることを確認したい。

1. On Directional Frames Having Lipschitz Continuous Fourier Transforms / 藤ノ木 健介 (東海大学), ○橋本 紘史 (筑波大学), 木下 保 (筑波大学) [概要]

   本講演では、２次元のウェーブレット変換の離散化であるフレームによる展開について考察する。特に、フーリエ変換がリプシッツ連続となるようなフレームが構成できたので報告する。また、リプシッツ連続でない場合との比較の計算シミュレーションを行い、精度についても述べる。

2. 四元数線形正準変換 / ○芦野 隆一 (大阪教育大学) [概要]

   線形正準変換は光学や信号解析において重要な役割を果たしている． フーリエ変換，ラプラス変換，分数次フーリエ変換，フレネル変換などの変換は，線形正準変換の特別な場合として扱うことができる． したがって，四元数値関数の線形正準変換を考えることは意味がある． 本講演では，四元数線形正準変換を考える上で適切な合成積の定義を述べ，四元数線形正準変換の合成積定理について述べる．

3. ◎p進数体上の複素数値関数に対するStockwell変換【特別講演40分】 / ○鈴木 俊夫 (流通経済大学) [概要]

   Stockwell変換はFourier変換とウェーブレット変換のハイブリッド変換と言われており，近年注目をあびている．一方，有理数体を通常の絶対値ではなく，p進ノルムから定まる距離で完備化することにより，p進数体が定まる． 本講演では，p進数体上の複素数関数についてのStockwell変換を構成し，その特徴をみる．

1. Rigorous numerics in combustion problem : premixed stationary flames in weak thermal expansion setting / ○松江 要 (九州大学IMI / I2CNER), Matalon Moshe (University of Illinois at Urbana-Champaign) [概要]

   燃焼は人類最古のエネルギー生成過程であり、現在も二酸化炭素削減、資源の有効活用の観点から燃焼技術の向上は社会的重要課題と位置付けられます。特にエンジンなどに見られる予混火炎の一つの特徴量である「火炎伝播速度」の理解は、エネルギー生成効率に直結する重要な課題です。本講演では弱熱膨張性を仮定し、流体力学的不安定性を発現する予混火炎を記述するSivashinsky型方程式について解析を行います。流体のダイナミクスに重力がかかっていない仮定では厳密解が記述できますが、重力があると一般に解を陽に記述できません。そこで、分岐理論と精度保証付き数値計算を用いて、厳密解の存在と、対応する火炎伝播速度の計算を議論します。 そこでは、重力の有無によって全く違うダイナミクスが発現する様子が見られます。また、現実的な燃焼に対する本考察の位置付けも論じます。

2. シンプレクティック数値積分法に対する影のハミルトニアンの存在・非存在について / ○谷口 隆晴 (神戸大学，JST さきがけ) [概要]

   シンプレクティック数値積分法は，主にハミルトン方程式を対象とした時間方向の離散化手法である．このタイプの方法に対しては，影のハミルトニアンと呼ばれる，計算対象の系のハミルトニアンを近似する関数が形式的に求まり，数値解は，それをハミルトニアンとするハミルトンフローの軌道上に乗ると考えられている．本講演では，この影のハミルトニアンの存在・非存在について，シンプレクティック幾何学の観点から考察する．

3. ポテンシャル系の孤立不変集合のコホモロジーの評価 / ○柴山 允瑠 (京都大学) [概要]

   ConleyやEastonは位相幾何学的な手法の導入により，力学系の孤立不変集合の存在や位相的な性質を研究し，その理論は近年まで大きく発展してきた．本講演では，変分法により孤立近傍の境界から境界に達する軌道の存在を証明し，それによりその内部に含まれる孤立不変集合のコホモロジーの評価を与える．

4. Topological computation analysis of meteorological time-series data / ○森田 英俊 (京都大学), 稲津 將 (北海道大学), 國府 寛司 (京都大学) [概要]

   Morseグラフの方法を気象データから得られたノイズを含む時系列データの解析に応用する．特に，現実のデータ解析において不可避であるパラメーター選択に対して，ロバストな相空間内のダイナミクスを表す方法を考察する．結果として得られる気圧配置の特徴的な遷移は気象学的な知見と合致する．

1. サービスECにおける人々の予約行動パターンに基づく需要予測モデル / ○新谷 健 (京都大学大学院情報学研究科), 梅野 健 (京都大学大学院情報学研究科) [概要]

   サービスECとは、webを用いた事前予約が可能なサービス群の総称であり、例えば旅行やホテル、航空券、美容院やマッサージ、一部の飲食店などが一例である。 そういったweb予約における人々の行動パターンを明らかにして、需要予測を可能にするモデルの開発を試みている。

2. ◎安定分布による暗号通貨の価格変動分布解析とその評価手法 / ○柿中 晋治 (京都大学情報学研究科), 梅野 健 (京都大学情報学研究科) [概要]

   近年新たな金融資産として世界中から注目を集めている暗号通貨は正規分布では捉えきれないほど価格が大きく変動する。価格変動分布のファットテール性を上手く表現できる確率分布としてLevy安定分布がある。暗号通貨の価格変動データからLevy安定分布のパラメータを推定した後、一般化中心極限定理の理論的背景に基づいた分析および新たに定義した距離関数を用いた定量的分析を通して、推定分布に対する評価を行った。

3. 周波数多重を用いたワイヤレスグループ電力伝送方式 / ○中澤 勇夫 (京都大学大学院), 梅野 健 (京都大学大学院) [概要]

   ワイヤレス給電は対向システムを主に対象としており、ワイヤレスグループ電力伝送を目指したシステムはこれからの状況にある。複数の送電用のキャリア（搬送波）を束ねて送電する場合には、通信で用いられている周波数分割多重方式が対応している。発表では、周波数分割多重方式から概周期周波数配置のAPFA方式に用いている信号処理を離散化して小規模APFA方式としてワイヤレスグループ電力伝送方式を可能とする構成を提案し、諸特性を検討する。また、小規模APFA方式のカオス性も検証する。

4. 進化計算によるレザバーネットワークの機能分化 / ○山口 裕 (福岡工業大学), 津田 一郎 (中部大学) [概要]

   レザバー計算モデルは大自由度力学系を利用した機械学習手法として注目を集めており，また脳神経系のモデルとしても研究されている．我々は神経系の自己組織化のモデルとしてレザバー計算モデルを扱い，進化的計算手法によりネットワークを最適化することで，内部に機能分化を引き起こすことができるかを検討した．そしてタスクや拘束条件に依存して，ネットワークの中に特定のタスクに特化したニューロン群が現れることを見出した．

1. グラフの変形を用いた量子ウォークのユニタリ同値性 / ○瀬川 悦生 (横浜国立大学) [概要]

   2000 年代初頭に量子ウォークとして定式化されて以降, 多くの量子ウォークモデルがそれぞれの研究分野に応じた姿に形を変えて提案されている. この講演では, これらの様々な量子ウォークモデルを含むような, Partition-based walk という自然な拡張モデルを通じて, 各量子ウォークモデルを眺める. 同時に, 実はこれらすべての量子ウォークモデルがこのPartition-based walk とユニタリ同値となることをグラフの変形を用いて説明する. そしてハイパーグラフや単体的複体上への幾つかの拡張法などについて提案する.

2. ウォークによるレコメンデーションモデル / ○高橋 佐良人 (横浜国立大学　理工学府　博士課程後期) [概要]

   ランダムウォークを利用したレコメンデーションモデルは、今までにもいくつか提案されている。今回はユーザーの行動パターンを把握・評価することを１つの目標として、ウォークを利用したモデルによる評価を試みた。古典的なランダムウォーク、相関付きランダムウォーク、そして量子ウォークまで展開し、そのモデルの特徴・違いを検証する。

3. ◎確率セルオートマトンによって表現される粒子系の漸近分布の評価 / ○延東 和茂 (早稲田大学) [概要]

   確率バーガーズセルオートマトンと呼ばれる離散的な確率粒子モデルに対して，その漸近分布に関する予想を提案する．また，予想から導かれる漸近挙動における物理量がGKZ超幾何級数の比で表されることに着目しつつ，空間無限大における極限を計算し，それが既存の研究結果と一致することを確認する．さらに，これらの手法を適用できるような確率粒子モデルをいくつか提案し，それらの漸近分布に関する予想を説明する．

4. ◎超離散量子ウォークの保存量と定常状態 / ○渡邉 扇之介 (小山高専), 福田 亜希子 (芝浦工大), 瀬川 悦生 (横浜国立大), 佐藤 巌 (小山高専) [概要]

   本研究は確率統計や物理，情報などで広く知られる量子ウォークの超離散版を構築することを目指したもので，その第一歩としてmax-plus代数における量子ウォークを模したモデル，max-plusウォークを構成した．このmax-plusウォークの保存量と定常状態について述べる． 「量子酔歩」と呼ばれることもある量子ウォークは，その名の通り時間発展による挙動を厳密に調べることは難しい．本研究の結果は，この問題に対しての新しいアプローチとなることを期待している．

1. 電磁場の固有値移動に関する形状最適化問題と導波管への応用 / 村木 健太 (名古屋大学), 佐竹 正義 (SOKEN), ○畔上 秀幸 (名古屋大学) [概要]

   電場の固有値問題を制約条件にして，指定した固有値を指定した方向に移動する形状最適化問題を定式化して，固有値の形状微分を求めるまでを示す．その結果を使って導波管のフィルター性能を向上させた解析例を紹介する．

2. H1勾配法に基づく複数材料を考慮したロバストトポロジー最適化 / ○新谷 浩平 (名古屋大学), 畔上 秀幸 (名古屋大学) [概要]

   本発表では，複数材料の使用を想定した下で，平均コンプライアンスが最小となる構造物の形状と材料配置を同時に求める最適化問題を考える．また，材料分布のばらつきに対してロバストな解を導出する位相最適化問題を定義し，H1勾配法を用いた解法を示す．

3. 最適密度分布と時間発展 変分不等式問題 / ○海津　聰 [概要]

   有界領域 $D subset R^d, d=1,2,3)$上の密度分布 $x, \\\\\\\\\\\\\\\\kappa<= x(xi)<=1$, 全質量 $t_m(x)=int_D x(xi)d xi <=c_0$なる分布族を凸集合 $K^{c_0}$とし, 体積力 $f(xi)$と境界応力 $g(xi)$下, 分布 $x(xi)$ がなす 仕事量 $j_0(x)$, $x in K^{c_0}$の中で, $j_0(x)$の最小量を与える最適分布 $x(xi)$を $x^*=x^{c_0,*}$と する, 即ち, $j_0(x^*)=min_{x in K_{c_0} }} j_0(x)$. 本報告の要点は次の3点である. (1). $x^*(xi)$が存在する, (2). $x^*$を求めるスキーム$_{1,2}$の2種類を 提示, 最後に(3) スキーム$_{1}$の離散解が安定で, それは収束し, 極限は時間発展 変分不等式問題の解で ある. 以上.

4. 回転物体を有する流路における形状最適化 / ○尾関 優汰 (長岡技術科学大学　機械創造工学専攻), 倉橋 貴彦 (長岡技術科学大学　機械創造工学専攻), 片峯 英次 (岐阜工業高等専門学校　機械工学科) [概要]

   回転物体を有する流体機械として、エアコンやエンジンなどが挙げられる． これら流体機械の高効率化を目的として、ファンの翼形状や種類について検討した研究が行われてきたが、流体機械の最適流路形状についての検討は例を見ない． 本研究では，回転物体を有する流れ場に対し、随伴変数法に基づいた逆解析手法を使用し、回転物体を有する流路における形状最適化について検討を行う．

1. GPUによる階層型行列計算法の高速化に向けた多数の小密行列ベクトル積計算の最適化 / ○大島 聡史 (名古屋大学), 山崎 市太郎 (サンディア国立研究所), 伊田 明弘 (東京大学), 横田 理央 (東京工業大学) [概要]

   密行列ベクトル積はよく知られた行列ベクトル演算のひとつであるが、行列データの再利用の余地がないため、最適化の対象としてはあまり注目されていない。 しかし階層型行列計算法、特に階層型行列とベクトルの積を求める際には多数の小密行列ベクトル積を行う必要があり、その高速化が重要な意味を持つ。 本研究ではGPUを用いた小密行列ベクトル積の性能向上を目指して行ったパラメタチューニングの結果や、それを用いた階層型行列ベクトル積計算の高速化について報告する。

2. ◎Tensorコアを用いたTSQR / ○大友 広幸 (東京工業大学情報理工学院情報工学系), 横田 理央 (東京工業大学学術国際情報センター) [概要]

   縦長な行列に対するQR分解手法であるTSQRをNVIDIA Voltaアーキテクチャ世代より搭載された混合精度行列席演算回路であるTensorコアを用いて実装し，その計算精度と計算速度，メモリ使用量の評価を行った．

3. 修正グラムシュミット法によるBLR行列の近似QR分解 / ○伊田 明弘 (東京大学) [概要]

   低ランク近似手法は、科学技術計算に現れる密行列に対する高速計算手法として近年注目を集めている。BLR（ブロック低ランク）行列は、演算の行い易さと効率的な通信パターン構築の容易さを特徴に持つ低ランク近似手法の一つである。本講演では、ブロック低ランク行列形式に基づく近似QR分解手法について論じる。

4. 超並列電子状態計算に対するベイズ推定型計算性能解析 / ○星 健夫 (鳥取大学), 角田 皓亮 (鳥取大学), 田中 和幸 (鳥取大学), 深谷 猛 (北海道大学), 山本 有作 (電気通信大学) [概要]

   極限的大規模スパコン(富岳など)での利用を目的に，　自作の超並列電子状態計算ソフトELSESに対して，計算性能解析(強スケーリング性能予測)を行なった．計算時間Tをノード数Pの関数としてモデル化し(T=T(P))，実ベンチマークデータを用いたベイズ推定（マルコフ連鎖モンテカルロ法）により，性能予測する．　Oakforest-PACSでのベンチマークデータを用いて，計算性能解析を行なった．手法は汎用であるので，他ソフトにも活用できる．

1. 情報セキュリティへの符号理論の応用【招待講演60分】 / ○萩原 学 (千葉大学大学院理学研究院) [概要]

   情報セキュリティの諸機能を実現するツールとして符号理論（誤り訂正の理 論）が応用されることがある。本講演では、どのように符号理論が応用されるか、具体的例を挙げながら解説していく。また、講演者が注目している最近の符号理論を紹介し、今後の情報セキュリティへの応用可能性について問題提起する。

1. Haar-Like直交変換による非線形画像近似 / ○藤ノ木 健介 (東海大学) [概要]

   パラメーターを有するRoscaの球面Haarウェーブレット変換を2次元のウェーブレット変換に応用する。各パラメーターが非線形画像近似に与える影響を調査し、最適な組み合わせを計算機実験によって示す。その最適パラメーターを利用した新たなHaar-Like直交変換も紹介する。

2. 平行移動回転ありの画像分離問題における重みの推定方法について / ○守本 晃 (大阪教育大学), 芦野 隆一 (大阪教育大学), 萬代 武史 (大阪電気通信大学) [概要]

   複数の元画像を回転・平行移動した重み付き和を複数回観測する． 観測した複数枚の観測画像から元画像を分離したい． 前回までの講演で，2枚の観測画像のペアから， 元画像の枚数・相対的な回転角度・相対的な平行移動量 を推定する方法を提案した． 本講演では，相対的な重みを推定する問題に対して， ウェーブレット解析を用いた解法を提案する．

3. 周波数領域でコンパクトサポートを持つ自由な形状に設計されたウェーブレットを基礎にしたタイトウェーブレットフレームの構築【特別講演40分】 / ○戸田 浩 (豊橋技術科学大学), 章 忠 (豊橋技術科学大学) [概要]

   周波数領域で，自由な形状に設計された，コンパクトサポートを持つウェーブレットを基礎にして，タイトウェーブレットフレームを構築する手法を提案する．

1. 変分原理の周期解の分岐への応用 / ○藤原 俊朗 (北里大), 福田 宏 (北里大), 尾崎 浩司 (東海大) [概要]

   変分原理によれば，作用（Lagrangianの時間積分）の停留点が運動方程式の解である． この原理を周期解の分岐に応用する． 分岐において周期解の作用の2階微分 (Hessian) の固有値が重要な役割を担う． 固有値の一つがゼロになることが，分岐の必要十分条件であることを示す． この研究は福田宏，尾崎浩司との共同研究である．

2. ◎摂動系における周期軌道, ホモクリニック軌道, 第一積分および可換なベクトル場の非保存　パート２　適用例 / ○本永 翔也 (京都大学大学院情報学研究科), 矢ヶ崎 一幸 (京都大学大学院情報学研究科) [概要]

   周期軌道やホモクリニック軌道，第一積分あるいは可換なベクトル場をもつ微分方程式系が摂動を受けるとき，それらが微小変化を許して存在し続けるかは非自明であるが，最近その必要条件が講演者らにより得られた．ここではその結果を適用し，周期的な摂動を受ける剛体の運動方程式における周期軌道の存在や，サドルセンターを有する２自由度ハミルトン系の平衡点周りの極大超可積分性について論じる．

3. 摂動を受けるレイリー・ベナール対流に現れるカオス的混合と分岐構造 / ○渡辺 昌仁 (早稲田大学大学院 基幹理工学研究科 機械科学専攻), 吉村 浩明 (早稲田大学 基幹理工学部 機械科学・航空学科) [概要]

   　本研究では，流速ベクトル場に摂動を受ける2次元のレイリー・ベナール対流について，時間依存系における安定・不安定多様体に対応するラグランジュ・コヒーレント構造（LCS）および，ポアンカレ写像に着目し，対流現象に現れるラグランジュ的なカオス輸送の構造を解明することを目的とする．本発表では，安定な輸送領域となる準周期領域とLCSから，KAMトーラスの中心に存在する周期解を数値的に求め，特に，摂動の振幅を変化させた際の分岐構造の詳細を示した上で，その分類を試みる．

4. 成分濃縮ネットワークでの平衡解と素子形状最適化 / ○渡邊 辰矢 (茨城大学理学部), 松本 壮平 (産総研集積マイクロシステム研究センター), 小野 直樹 (芝浦工業大学工学部) [概要]

   混合流体の成分を弱く分離する素子を多数結合して分離能力を増強する2次元ネットワークで、平衡解とその安定性への分離関数の影響を調べた。また、温度差を用いて分離する素子の場合について、性能を高めるための形状最適化を試みた。

1. 乱数の特殊性に見る生成器の統計検定に関する考察 / ○奥富 秀俊 [概要]

   本発表は，乱数生成器に対する統計的評価（統計検定）について考察するものである．はじめに，一般的な統計検定が対象とする問題に比べて，乱数（乱数生成器）を対象とする場合の特殊性について触れる．特殊性を配慮した上での生成器に対する統計検定が意味することについて考察する．

2. 乱数性の劣る2値系列を用いた乱数検定の特徴付けと類似性の評価について / ○山口 明宏 (福岡工業大学), 斉藤 朝輝 (公立はこだて未来大学) [概要]

   乱数性の検定においては複数の異なる種類の乱数検定が用いられるため検定間の独立性が問題となるが，個々の検定において独立な異なる2値系列を対象とする場合には独立性の問題は解消される．本研究では，独立性とは異なる乱数検定間の類似性の評価を目的として，対立仮説に相当する乱数性が劣る系列に対する検定結果を用いて乱数検定の特徴付けを行う方法を提案し, NIST SP800-22に含まれる乱数検定について類似性の評価を行った結果を報告する．また，乱数検定の独立性と提案する類似性との関連についても議論する．

3. NISTの二重検定におけるサンプルサイズ / ○原本 博史 (愛媛大学教育学部) [概要]

   NIST SP800-22で扱われている擬似乱数の統計的検定法では、p値の分布の一様性に関するカイ二乗適合度検定が行われる。本発表では、NISTの検定プログラム利用を前提として、この二重検定のサンプルサイズをモンテカルロ法を用いてより適切に決める方法と、関連する実験結果を報告する。

4. 複数項目のカイ二乗検定の独立化 / ○岩崎 淳 (京都大学) [概要]

   同一のサンプルに対する異なるクラス分けでカイ二乗検定を複数実施する状況においては、一般にはそれぞれの項目で求まるp値の分布は帰無仮説の下で独立にならない。本発表では、参照分布の結合分布が既知の下で、求まる複数のp値が独立になるような検定統計量の変形を提案する。提案手法においては、「参照分布とのズレ」を重み付き二乗和で評価する通常のカイ二乗検定の枠組みは保たれる。

1. 辺符号グラフ上の量子ウォーク / ○吉江 佑介 (東北大学情報科学研究科), 久保田 匠 (東北大学情報科学研究科), 瀬川 悦生 (横浜国立大学環境情報研究院), 谷口 哲至 (広島工業大学電子情報工学科) [概要]

   量子ウォークは古典ランダムウォークの量子アナロジーとして知られるモデルであり、特に探索問題への有効性を与えるなど昨今注目を浴びている。本講演では各辺に1か-1の符号が割り振られた辺符号上で量子ウォークを構成し、特に-1の符号が割り振られた辺を探索する探索問題を提案する。その際、いくつかの系では従来の量子探索問題のように、古典探索時間の平方で探索が叶う事を示す。

2. 量子乱数と量子ウォークの関係性 / ○鹿野 豊 (慶應義塾大学・チャップマン大学) [概要]

   量子乱数生成は量子セキュア社会の実現に向けたキーテクノロジーとして注目されている。しかし、その生成アルゴリズムについて、どのような条件を満たせば良いか？ということが明確ではなかった。本講演では、これまで量子確率過程として見なすことが出来る量子ウォークと量子乱数生成の関係について論じ、真の乱数生成が可能であるか？ということと、数理的にどのようなことを示せば良いか？ということを議論する。

3. 二刀流? 量子ウォークと無限粒子系【特別講演40分】 / ○今野 紀雄 (横浜国立大学大学院 工学研究院) [概要]

   量子ウォークは，ランダムウォークの量子版として2000年頃より，量子コンピュータ周辺から本格的な研究が始まった「量子系のモデル」である．一方，無限粒子系は，有限個あるいは無限個の粒子が確率的に相互作用しながら時間発展する，1970年頃より研究されてきた「古典系のモデル」である．この「量子ウォーク」と「無限粒子系」との非自明な類似性にも触れつつ，それらを概説したい．

1. チュートリアル　AND-OR木の探索コスト / ○鈴木 登志雄 (首都大学東京　理学研究科　数理) [概要]

   AND-OR木は，NANDゲートからなる木と（ほぼ）等価な，ラベル付き木である．葉はブール変数，根の値はブール関数とみなされる．根の値を求める計算の途中でアルゴリズムがいくつのブール変数にクエリ（問い合わせ）をするか考え，この回数を探索のコストとみなす．真理値割り当ての確率分布に対してはコスト期待値を考える．このような木の探索コスト期待値について，チュートリアル講演を行う．

2. 重み付きAND-OR木の固有分布について【招待講演40分】 / ○田中 一之 (東北大学理学研究科) [概要]

   ランダム入力をもつAND-OR木の決定アルゴリズムに対する計算コストは，根の真理値を判定するまでの，葉(変数)の値へのクエリ回数で測られる．劉-田中(2007)は最良アルゴリズムによる最小コストを最大化する入力分布を「固有分布」と呼び，以後多くの人の努力で，様々な木のクラス，アルゴリズムのクラス，入力分布のクラスに対して固有分布が調べられてきた．本講演では，とくに重み付き木に対する最近の研究成果を報告する．

3. ソロベイ還元と連続性 / ○鈴木 登志雄 (首都大学東京　理学研究科　数理) [概要]

   計算可能性理論における還元（帰着，reduction）は，実数どうしの複雑さを比較する擬順序である．とくにソロベイ還元は，実数の距離に基づいて定義される．リプシッツ連続な実関数の存在によってソロベイ還元を特徴付けることから始まった研究（隈部正博，宮部賢志，水澤勇気との共同研究）について紹介する．ヘルダー連続関数に対応する還元を導入し，エフェクティブハウスドルフ次元との関係を示す．

1. 相対的高メモリバンド幅環境における密行列固有値ソルバの実装方式について / ○片桐 孝洋 (名古屋大学) [概要]

   本発表では、ポストムーア時代に想定される計算機環境において、従来の数値計算の実装方式のトレンドからの変革について展望を述べる。具体的には、演算性能に対して相対的に高いメモリバンド幅をもつ計算機環境を想定し、同環境において、密行列固有値ソルバーの高性能な実装方式について、予備評価から将来展望を論じる。

2. Xeon Phiクラスタにおける二次元分割を用いた並列三次元実数FFTの実現と評価 / ○高橋 大介 (筑波大学) [概要]

   本論文では，Xeon Phiクラスタにおける二次元分割を用いた並列三次元実数FFTの実現と評価について述べる． 実現した並列三次元実数FFTは離散Fourier変換の共役対称性およびrow-column FFTアルゴリズムに基づいている． また，二次元分割が多数のMPIプロセスに対して通信時間を短縮することによって性能を効果的に改善することを示す． Xeon Phiクラスタにおける三次元実数FFTの性能評価の結果についても報告する．

3. メニィコアクラスタ向け並列多重格子法 / ○中島 研吾 (東京大学情報基盤センター・理化学研究所計算科学研究センター) [概要]

   並列多重格子法は，エクサスケールシステムにおける大規模問題向け数値解法として注目されている．著者等の提案したHierarchical Coarse Grid Aggregation（hCGA）法は，MPIプロセス数が10^4以上の場合，並列多重格子法ソルバの性能を劇的に向上させるが，著者による先行研究では，階層化のレベル数が2であるため，10^5-10^6プロセス以上の場合には，Coarse Grid Solverによる計算オーバーヘッドが顕著となる可能性がある．本研究では，3レベル以上の多階層を考慮できるAM-hCGA法(Adaptive Multilevel hCGA)を提案し，Oakforest-PACS（JCAHPC）使用した計算例を紹介する．

4. 倍精度と単精度を用いた混合精度GMRES(m)法の収束性に関する実験的評価 / ○深谷 猛 (北海道大学), グドール 聖哉 (北海道大学), 張 臨傑 (中国海洋大学), 岩下 武史 (北海道大学) [概要]

   最近，計算速度や消費電力の観点から，低精度演算の活用が注目されている。本発表では，倍精度と単精度の浮動小数点演算を併用したリスタート付きGMRES（GMRES(m)）法の収束性について，数値実験により評価を行った結果を報告する。

1. ◎Leanを用いた単一削除符号の形式化に向けて / ○近藤 裕樹 (千葉大学大学院融合理工学府), 萩原 学 (千葉大学大学院理学研究院) [概要]

   削除符号は1965年に発表されたLevenshteinの論文を契機に、今なお研究が続けられている。本研究の目的は、上記符号の情報セキュリティへの応用に備え、形式的な定義・定理のライブラリをあらかじめ準備することにある。本講演では、単一削除符号の中で最も有名なLevenshtein符号の形式化の状況を報告する。

2. Mizarによる離散確率分布の統計的識別不能性の形式化 / ○岡崎 裕之 (信州大学), 布田 裕一 (東京工科大学), 師玉 康成 (信州大学) [概要]

   発表者らは暗号の安全性証明の形式検証についての研究を進めている。本発表では確率分布の統計的な同一性の判定方法であるKS検定の形式化を定理証明システムMizarを用いて行うことで、統計的識別不能性を形式化する方針について報告する。

3. ◎状態の更新を含むプロトコ ルの形式化の検討 / ○野口 凌雅 (茨城大学), 花谷 嘉一 (株式会社 東芝), 米山 一樹 (茨城大学) [概要]

   SCIS2019において，IEEE 802.21に おけるグループ鍵管理手法について，形式手法を用いた自動検証ツールProVerifを 用いて検証を行った。しかし，状態の更新を含むリプレイ攻撃の検証は行えなかった。本発表では，状態の更新を含むプロトコルの形 式化の検討を行う。

1. Stochastic modelling with randomised Markov bridges / ○関根 順 (大阪大学) [概要]

   マルコフ橋の終端時刻Tでの終端値に確率変数Xを代入したランダムマルコフ橋を考え、これを隠れた確率変数Xのノイズ付き観測過程と解釈する。すなわち、T以前の時刻ではXにノイズが付いた値が観測され、時刻Tではノイズが消滅しXそのものが観測される。このランダムマルコフ橋過程に関するフィルタリング問題を取り扱い、条件付き確率やフィルタリング方程式の導出を行う。また具体例として歪ガウス過程モデルを提示する。さらに、このモデルを温室効果ガス排出に関連した金融取引のプライシングに応用する試みを紹介する。本講演はAndrea Macrina(University College London)との共同研究に基づく。

2. ◎Ito Calculus in Risk Theory / ○宮城 惠 (立命館大学大学院), 赤堀 次郎 (立命館大学), Constantinescu Corina (Liverpool University) [概要]

   通常の損害保険数理のモデルに拡散過程を追加したモデルに対して倒産確率、あるいは、より一般にGerber-Shiu関数をある特殊なフィルトレーションに対するマルチンゲールによって特徴付けるという結果について報告する。本研究はCorina D.Constaninescu、Enrique、Thoman氏の研究に基づいており、その一般を目指すものである。Corina D.Constaninescu、Enrique、Thoman氏の研究では作用素論的手法が主に用いられているが本研究では伊藤の公式を用いた確率解析的手法が用いられる。

3. Stochastic Hamiltonian Systems for Economic Growth Models / ○鈴木 康太 (立命館大学大学院理工学研究科), 赤堀 次郎 (立命館大学大学院理工学研究科) [概要]

   マクロ経済モデルの一般均衡モデルや、Nordhausらによる動的統合気候変動モデルは離散時間の確率的最適化問題であるが、その連続時間版が近年注目を集めている。連続時間の確率制御問題は通常HJB方程式に還元して解かれるが、今回の研究では（後退確率微分方程式ではない）確率ハミルトン系を利用した解法を提案する。確率ハミルトン系に「可積分性」に対応する概念があるかどうかに特に興味があり、今回はそれについても報告をしたい。

1. ◎時間遅れ滑らか依存性：時間遅れがもたらす平滑化効果と反応の時間的順序 / ○西口 純矢 (東北大学 材料科学高等研究所) [概要]

   この講演の目的は，時間遅れパラメータに関する解の滑らか依存性と初期履歴の正則性 (regularity) の関係性を明確にすることである．パラメータに関する解の滑らか依存性は基本的な問題ではあるが，関数微分方程式の時間遅れパラメータに関する滑らかさと初期履歴の正則性は密接に関わっている．したがって，滑らか依存性を得る上でどのような履歴空間を選択すればよいかは自明ではない．本講演では，この考察においてソボレフ空間 $W^{1, p}$ が履歴空間として自然に現れること，および平行移動の $L^p$ 空間における微分可能性が滑らか依存性を示す上で重要なツールであることを示す．「時間遅れがもたらす平滑化効果」としてそのメカニズムを理解でき，また「反応の時間的順序」という時間遅れに関する構造がこの問題に隠されていることを提示する．

2. 半古典位相縮約理論による量子同期現象の解析 / ○加藤 譲 (東工大), 中尾 裕也 (東工大) [概要]

   位相縮約理論は、非線形振動子のリズム現象を解析するための理論体系である。 本研究では、量子系の非線形振動現象に対して、半古典近似下で位相縮約理論を定式化した。 具体的には、半古典近似下で、量子散逸系の密度行列の発展方程式より状態空間表示の確率微分方程式を導出し、 さらにその決定論的部分のリミットサイクル解に対して１次元の位相方程式を導出した。例として、量子非線形振動子の外力との引き込み現象を解析した。

3. ◎Pitchfork bifurcations and linear stability of solitary waves in coupled nonlinear Schrödinger equations / 矢ヶ崎 一幸 (京都大学), ○山添 祥太郎 (京都大学) [概要]

   We consider coupled nonlinear Schrödinger (CNLS) equations with a general nonlinearity. We assume that CNLS equations possess a solitary wave of which one component is identically zero and that the pitchfork bifurcation of this solitary wave occurs. We show that the bifurcated solitary waves are orbitally stable if they are positive and are linearly unstable if they have a sign-changing component. Our assumptions are easier to verify than previous results.

4. Bifurcations and stability for one-parameter families of symmetric periodic orbits in reversible systems / ○矢ヶ崎 一幸 (京都大学) [概要]

   We study bifurcations and stability for one-parameter families of symmetric periodic orbits in reversible systems. In a previous work, bifurcations from one-parameter families of symmetric periodic orbits were theoretically investigated. Moreover, the theory was applied to a generalization of the Henon-Heiles system and showed that there exist infinitely many families of symmetric periodic orbits bifurcating from a family of symmetric periodic orbits. In this paper we concentrate on the stability for these one-parameter families of symmetric periodic orbits and obtain some criteria for determining their stability. Especially, it is shown that the original periodic orbits do not change their stability except in special cases when the subharmonic bifurcations occur. This may be surprising since in the standard theory of dynamical systems periodic orbits change their stability when they suffer bifurcations. We apply our theory to the generalized Henon-Heiles system and give numerical computations to illustrate and demonstrate the theoretical results.

1. ◎Quantum Computer Status Check via Output Random Number Sequence / 鹿野 豊 (慶應義塾大学理工学研究科), ○田村 賢太郎 (慶應義塾大学理工学研究科) [概要]

   A cloud quantum computer is similar to a random number generator in that its physical mechanism is inaccessible to the users. In this respect, a cloud quantum computer is a black box. In both devices, the users decide the device condition from the output. A framework to achieve this exists in the field of random number generation in the form of statistical tests for random number generators. In the present study, we generated random numbers on the 20-qubit cloud quantum computer and evaluated the condition and stability of its qubits using statistical tests for random number generators. As a result, we observed that the qubits varied in bias and stability. Statistical tests for random number generators may provide a simple indicator of qubit condition and stability, enabling users to decide for themselves which qubits inside a cloud quantum computer to use.

1. 地震波動伝播シミュレーションのための拡散効果を伴う修正波動方程式の混合型有限要素法 / ○今井 隆太 (みずほ情報総研株式会社), 賀須井 直規 (みずほ情報総研株式会社), 山田 雅行 (株式会社ニュージェック), 羽田 浩二 (株式会社ニュージェック), 藤原 広行 (国立研究開発法人防災科学技術研究所) [概要]

   拡散効果を伴う修正波動方程式を使って、地震波動伝播シミュレーションのための平滑化スキームを開発する。修正波動方程式は空間変数の四階微分を含むため、通常の弱定式化では高次の滑らかさが必要になる。本研究では、この要求を緩和するために混合型有限要素法による地震波動伝播シミュレーションを提案する。混合型定式化を用いると、修正波動方程式は非斉次の拡散方程式の連立方程式になる。この方程式系自体の性質と離散化した計算スキームの性質を示した後、弾性波動方程式に対して本手法を適用した数値シミュレーションを実施して、平滑化に有効であることを示す。

2. 拡散テンソルトラクトグラフィへの応用のためのフィザルムソルバの拡張 / ○増谷 佳孝 (広島市立大) [概要]

   拡散テンソルトラクトグラフィは，MRIより得られる拡散テンソルの最大固有値方向を神経線維方向と近似し、脳白質線維束などの線維構造を可視化するもので，診断および治療において応用されている。応用の初期から指摘されてきた線維交叉などの問題に対し、ベクトル場のストリームラインでトラクトグラフィを生成する手法のためのフィザルムソルバの拡張について報告する。

3. 神経スパイクモデルの連立微分方程式系の数値解法について / ○伊藤 利明 (同志社大学) [概要]

   ニューロン1つ1つのの発火モデルは，非常に強いスパイクをもつ関数で再現される．この関数は，非線形常微分方程式の解がある値になった時のジャンプで再現される．ニューロンが複数で協調的振る舞いをする場合に，この関数を数値解法でうまく扱うには，計算精度とスパイク周辺での特殊な扱いの適当な手法の組み合わせが必要となる．この組み合わせが，マクロ現象の脳波信号の周期の再現シミュレーションに影響する．本報告では，色々な数値処理の組み合わせのシミュレーションによる脳波信号の周期の再現について報告する．

4. ◎非分解型解法における抵抗境界条件と冠動脈分岐流量の分配 / ○宇田 智紀 (東北大学材料科学高等研究所) [概要]

   本講演では，3次元流体数値計算による冠動脈血流の解析，特にその境界条件の数学的定式化について述べる．左心室を出た血液は全体のおよそ95%が大動脈側に，残りが左右冠動脈に流れるが，単純な自由流出境界ではこの分配は実現されない．そこで，抵抗境界条件・インピーダンス境界条件とOlufsenの全身血管網近似モデルを用いてより自然な流量分配を実現するための方法論をご紹介する．

1. ◎Existence and non-existence of the asymmetrical rotating solution of the reaction-diffusion particle model / 長山 雅晴 (北海道大学 電子科学研究所), 後藤田 剛 (名古屋大学 多元数理科学研究科), ○岡本 守 (北海道大学 理学院数学専攻) [概要]

   円環水路上に２枚の円形樟脳濾紙を浮かべると，この２枚が共に等速で進行することがある．この時，円環の中心を対象点として２枚の樟脳濾紙が点対称であるか，非対称となるかで２通りの運動が考えられる．実験では対称，非対称両方の運動が確認され，モデル方程式が対応する解を持つことも数値的に確認されている． 今回，モデル方程式が非対称な等速運動に対応する解を持つための十分条件，および持たないための十分条件を解析的に求めた．

2. ◎細胞の大きさと形状を残す空間離散モデルの連続化の提案と応用 / 石井 宙志 (北海道大学), 栄 伸一郎 (北海道大学), 佐藤 純 (金沢大学), ○田中 吉太郎 (はこだて未来大学), 八杉 徹雄 (金沢大学) [概要]

   多細胞生物の発生過程では，細胞の形や，配置などの離散的な空間構造を観察することができ，細胞膜を介する相互作用が，細胞の分化や，細胞極性等を制御している．こうした現象を解析するのに，空間離散モデルが多く提案されているが，解析が困難であることが多い．このことを動機として本講演では，細胞の大きさと形状を残す空間離散モデルの連続化を提案する．既存の空間離散モデルの連続化とその応用例について報告する．

3. LIFモデルに対するFokker-Planck 方程式における時間周期的な運動を示す空間非一様解 / ○池田 幸太 (明治大学), Salort Delphine (Sorbonne Universite), Roux Pierre (Universite Paris-Sud and Sorbonne Universite) [概要]

   ニューロンの膜電位の挙動を理解するために提唱されているLIF (leaky integrate-and-fire) モデルを本研究では対象とし, さらにLIFモデルから導出されるFokker-Planck 方程式を取り扱う. ここで得たFokker-Planck 方程式には時間遅れ効果が含まれるが, その影響で, パルス型の空間形状を保ちながら時間周期に運動する様子が数値シミュレーションにおいて観察される. 本講演ではこの特徴的な解を構成することを目標とする.

4. Existence and stability of symmetric solutions of a variational problem for plane curves / 上坂 正晃 (東京大学), 上田 肇一 (富山大学), ○中村 健一 (金沢大学), 長山 雅晴 (北海道大学) [概要]

   表皮基底膜の数理モデルに関連した変分問題について考察する。対象となるエネルギー汎関数は、平面曲線の弾性エネルギーと接着エネルギーの和で定義されており、前者は曲線が真っ直ぐになるほど、後者は曲線が凹になるほど小さくなり、両者のバランスで解が構成される。本講演では、接着エネルギーを定める係数が非一様な場合に、エネルギー汎関数の臨界点が存在するための条件を与えるとともにその安定性を議論する。

1. シミュレーションデータを用いた基礎方程式の推定 / ○小野 謙二 (九州大学), 櫻井 大督 (九州大学), 古賀 壱成 (プログレス・テクノロジーズ) [概要]

   CFDや化学反応連鎖のシミュレーションを行い、それらのデータを使い、元の支配方程式を推定した。推定にはGenetic Programmingを用いて得られた結果をパレート解析により分析し、式を推定する分析方法を提案した。その結果、項数が少なく適合度が高い方程式が支配方程であることが判明し、提案方法は固有の知識を必要とせずに支配方程式を自動的に推定できることを確認できた。

2. 構造解析向け超並列固有値ソルバの大規模実応用モデルにおける性能評価 / ○二村 保徳 (筑波大学), 櫻井 鉄也 (筑波大学), 畠澤 作二郎 (エムエスシーソフトウェア株式会社) [概要]

   本講演では並列性の高い固有値ソルバである櫻井・杉浦法をベースとし、構造解析における固有値計算を対象とした高性能実装について述べる。大規模な実応用モデルを対象とした超並列計算環境上での性能評価結果を示す。

3. NMF型DNN計算法とその応用 / ○今倉 暁 (筑波大学), 二村 保徳 (筑波大学), 櫻井 鉄也 (筑波大学) [概要]

   画像認識や音声解析などの分野においてディープニューラルネットワーク（DNN）計算が成果を上げており活発に研究が進められている。本講演では、標準的手法であるバックプロパゲーション（BP）法と異なるアプローチに基づくDNN計算法として、近年我々が開発を進める非線形非負値行列因子分解（非線形NMF）を用いたNMF型DNN計算法およびその改良法について示す。また、その応用事例についても併せて紹介する。

4. 1周期未満波形からの時間周波数解析 / ○石山 文彦 (NTT) [概要]

   時間周波数解析手法には、直交基底関数と解析対象波形との相関積分をとるものというイメージがある。有限区間の場合、与えられた区間内で直交する必要があることから、複数周期波形が必要になる。そこで我々は、久保の線形応答理論をベースとした手法を提案する。我々の手法は、局所的な直交座標系の固有値から周波数情報を算出しようとするものであり、周期性の概念を要せず、１周期未満波形からも詳細な周波数情報を得ることができる。

1. ◎非対称疎行列を係数とする連立一次方程式に対する精度保証付き数値計算の数値的比較 / ○南畑 淳史 (中央大学), 荻田 武史 (東京女子大学), 大石 進一 (早稲田大学) [概要]

   正定値対称行列などの特別な性質を持つ係数行列を持つ連立一次方程式に対しては疎を保つ精度保証付き数値計算が提案されている．しかし，非対称疎行列については決定版といえるような方法が提案されていない．本講演では，左前処理としてLの近似逆行列を用い，右前処理としてUの近似逆行列を用いる精度保証付き数値計算法に着目する．そして，この方法を用いることで，問題によっては10万元を超える大規模な連立一次方程式に対して，精度保証が可能であることを数値実験により示す．

2. ◎Gaussの超幾何微分方程式のモノドロミー行列に対する精度保証付き数値計算 / ○井上 直也 (筑波大学大学院システム情報工学研究科), 石毛 利昌 (千葉大学大学院理学研究科), 高安 亮紀 (筑波大学システム情報系) [概要]

   Gaussの超幾何微分方程式に対して, 解の多価性を表現するモノドロミー行列の値を得た. 精度保証付き数値計算を用いてある特異点周りの閉経路に沿った解析接続を行うことで, 特異点周りのモノドロミー行列を厳密に包含することができた. Gaussの超幾何微分方程式の場合はモノドロミー行列を得る陽的な公式があり, この数値結果が真の値を含むことを確認できる.

3. ◎大規模並列環境における実対称標準固有値問題の精度保証法 / ○寺尾 剛史 (芝浦工業大学), 尾崎 克久 (芝浦工業大学), 荻田 武史 (東京女子大学) [概要]

   本研究では，大規模並列環境における実対称行列の標準固有値問題に対する近似固有値の精度保証法を提案する． 我々は，任意の計算方法で計算された全固有対を用いる近似固有値の精度保証法を扱う． 提案手法は，従来の精度保証で用いる誤差評価式を大規模行列に対して改善できるように再評価したものである． また，名古屋大学のFX100を用いた提案手法のスケーラビリティの評価を行い，大規模並列環境での提案手法の有効性を示す．

4. 3つの行列の積に対する無誤差変換と固有値問題への応用 / ○尾崎 克久 (芝浦工業大学), 荻田 武史 (東京女子大学) [概要]

   本発表では，成分がすべて浮動小数点数で表現された3つの行列A,B,Cの積ABCを扱う．行列A,B,Cの情報からBの近似であるB’を生成し，浮動小数点演算を用いてAB’Cを評価しても丸め誤差が発生しないようにする．この技術を利用して，真の固有値と固有ベクトルが事前にわかるテスト行列の生成法を提案する．また，固有ベクトルを並べた行列の条件数も指定できるように手法を提案する．

1. Conic finance に基づくポートフォリオ構築 / ○中川 秀敏 (一橋大学大学院経営管理研究科) [概要]

   Conic Finance は、市場では常に bid と ask の２つの価格が存在するという「一物二価」を前提にした理論である。本講演では、Madan and Schoutens (2016) の例に倣い、「ポートフォリオ全体でのbid」と「個別資産のbidの投資比率加重和」の差で定義される「ダイバーシティ尺度」を最大化するポートフォリオ構築法を日本株式で応用した結果および検討課題を報告する。

2. 位置情報分析による人口統計を活用した、J-REIT投資戦略の有効性について / ○金子 拓也 (KDDI総合研究所, ICU), 木村 塁 (KDDI総合研究所), 美嶋 勇太朗 (KDDI総合研究所) [概要]

   HFTなど、ビッグデータを活用した金融商品の効率的なトレーディングが注目されている。本研究で取り上げるJ-REITは、収益の9割以上を配当すれば法人税が免除されるなどの仕組みを特徴とするが、これにより投資不動産からの収入は、配当額との連動性が高くなり、ついてはエクイティ価格とも高い相関性が観測されると考えられる。本研究では、投資不動産からの収入を位置情報分析による人口統計でタイムリーに予測し、株価（投資口価格）の効率的なトレーディング戦略について考える。

3. ハル・ホワイトモデルに対するフォワード・スターティング・オプション価格計算 / 畑 宏明 (静岡大学), ○安田 和弘 (法政大学), 劉 念麟 (東京理科大学) [概要]

   ハル・ホワイトモデル下でのフォワード・スターティング・オプション価格のモンテカルロ法を用いた計算について講演する。まず、オプション価格に対する準解析的な表現およびその展開を用いた表現を与える。その後、表現による計算時間や精度に対する数値計算結果を与える。

4. ２重待ち行列モデルについての１コメント / ○岸本 一男 (東京理科大学) [概要]

   証券市場での売買注文の到着が，著者らが提案している「２重待ち行列モデル」に従うと仮定した場合について，投資家の振るまいが系の性質に与える影響につき簡単な指摘を行う．

1. 分布型の遅れをもつ微分方程式の解の爆発について / 石渡 恵美子 (東京理科大学), ○石渡 哲哉 (芝浦工業大学), 中田 行彦 (島根大学) [概要]

   分布型の時間遅れをもつ遅延微分方程式の解の爆発現象について考える。いくつかの時間遅れの分布のタイプを考え、解の爆発が起きる場合とそうでない場合について分類を行った。

2. 曲線短縮問題に現れる準線形放物型偏微分方程式に対する爆発解の漸近挙動に関する一考察 / ○穴田 浩一 (早稲田大学高等学院), 石渡 哲哉 (芝浦工業大学), 牛島 健夫 (東京理科大学) [概要]

   自己交差する閉曲線に対する曲線短縮問題について、収縮速度が曲線の曲率に比例するとき、その収縮速度が有限時刻でType II 爆発する部分があることが示されているなど、その振る舞いについて様々な研究が行われている。今回は、収縮速度が曲線の曲率の累乗に比例する場合について、その収縮速度の振る舞いを考察する。

3. 爆発解の漸近オーダーの推定法 ー Benford の法則の応用 ー / ○小澤 一文 (秋田県立大学名誉教授) [概要]

   爆発解が爆発するとき，指数オーダーで爆発するか，多項式オーダで爆発するか，あるいは対数オーダーで爆発するかが重要になる。この発散オーダーを解をある規則に基づいてサンプルすることによって推定する方法を提案する。

4. ◎ドラッグ・デリバリー・システムを表現するモデル方程式の時間大域解の漸近的挙動 / ○岩崎 悟 (大阪大学) [概要]

   ドラッグ・デリバリー・システムとは，人体に投与した微小なデバイスが自己創発的に悪性腫瘍などのターゲットとなる領域に集まり，薬剤を投与するシステムである．本講演では，ドラッグ・デリバリー・システムを表現する数理モデルとして提案された移流反応拡散方程式の時間大域解の漸近挙動に関する解析結果について紹介する．

1. ◎枢軸選択付きQR分解を用いた行列の低ランク近似アルゴリズムの打ち切り誤差の解析 / ○河村 遼 (東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻須田研) [概要]

   枢軸選択付きQR分解は特異値分解に比べ低ランク近似として精度が悪いことが知られている. しかし計算量が少ないので使われることも多い.n×mの行列をn×kの行列とk×mの行列の積に近似する時の計算量はO(nmk)で理論上も実装上も高速である. 本講演では枢軸選択付きQR分解の打ち切り誤差を正確に見積もったのでこれを発表する.

2. On the Limit cycle behavior in Homothermal Maintenance of Skunk cabbage / ○Erdenebaatar Turtogtokh (Iwate University), Shuji Kawasaki (Iwate University), Kikukatsu Ito (Iwate University) [概要]

   The plant called Skunk Cabbage is known to have a remarkable feature that it has a heating organ and retains its body temperature almost constant around 22~24 [°C] at the end of winter. As the mechanism of the homothermal maintenance, we have found that the control has a linear equilibrium phase and nonlinear non-equilibrium phase. We consider, from a data analytic study, how well the Van der Pol equation model fit the latter phase.

3. ◎局所Lyapunov関数を用いたホモクリニック軌道の精度保証法 / ○新田 光輝 (電気通信大学), 山本 野人 (電気通信大学), 松江 要 (九州大学) [概要]

   我々は双曲型平衡点を持つ力学系の解析ツールとして、精度保証付き数値計算による局所Lyapunov関数の構築法に関する研究を行ってきた。本講演では局所Lyapunov関数の応用として、ホモクリニック軌道の存在検証を行う精度保証法を提案する。ホモクリニック軌道の存在証明は大域的な解析であり、局所Lyapunov関数の有用性を示す例になっていると考えられる。

1. 接触角度を持つ自由表面問題の有限要素解法と近似界面のEuler標数の計算 / ○鈴木 厚 (大阪大学 サイバーメディアセンター) [概要]

   液相と気相の界面が計算領域の境界と90度未満の接触角度を持つ自由表面問題を考える. 二重井戸ポテンシャルエネルギーを接触角度の条件と体積保存の制約を課して最小化する状態を達成する極値は非線形楕円型方程式の解として求められる. その界面は相を表す指標関数のゼロ等高面となる. 液相が計算領域を充填するかどうかが工学的応用での関心である. 液相領域が単連結かを判定するために, ゼロ等高面を有限要素の四面体毎に探索し, 近似界面のEuler標数を計算するアルゴリズムとC++言語によるFreeFEMの機能拡張を用いた実装方法を示す.

2. ◎A study of the toughness of epoxy resins: phase field modeling of fracture. / ○Xie Shuangquan (Tohoku University, AIMR), Nishura Yasumasa (Tohoku University, AIMR), Takaishi Takeshi (Musashino University), Agaki Kazuto (Tohoku University, AIMR), Avalos Edgar (Tohoku University, AIMR) [概要]

   We explore the relation between fracture toughness and micro-structures of epoxy material under four different types of processing. The concept of effective toughness is used as an indicator to represent the macroscopic toughness. The microstructure is obtained from the X-ray CT scanning and stand for the heterogeneity of the material. We numerically study the effects of heterogeneous elasticity on toughness based on the phase field model. Numerical simulations show that one type of material has higher effective toughness than others statistically, this result is consistent with the experiments.

3. Stokes方程式の滑り境界値問題に対するCrouzeix-Raviart非適合有限要素法について / ○及川 一誠 (一橋大学大学院経営管理研究科), 柏原 崇人 (東京大学大学院数理科学研究科), 周 冠宇 (東京理科大学) [概要]

   領域の境界が滑らかで曲がっている場合，滑り境界値問題に対して有限要素法を素朴に適用すると上手くいかないことが知られている．本講演では，このようなことを回避する方法の一つとして，Crouzeix-Raviart非適合有限要素法を用いることを提案し，数値実験により有効性を検証する．

4. FreeFEMを用いた数値シミュレーション教育の現状と課題 / ○中澤 嵩 (大阪大学MMDS) [概要]

   FreeFEMを用いた数値シミュレーション教育の現状と課題について述べたい．特に，登壇者がこれまで行ってきた，学部1年から博士前期課程の学生を対象とした講義内容を紹介するとともに，今後どのように利用者を増やしていくかについて検討した．

1. ◎表皮構造の数理モデリング / ○大野 航太 (北海道大学 電子科学研究所), 小林 康明 (北海道大学 電子科学研究所), 長山 雅晴 (北海道大学 電子科学研究所) [概要]

   皮膚の最表層である表皮はいくつかの層構造を形成している事が知られている。この表皮構造について、皮膚科学と実験的な知見を基にした数理モデルを構築する事で、数理的なアプローチから表皮構造を理解することを我々は試みてきた。本講演ではその再現結果について紹介する。

2. 表皮内タイトジャンクション形成の数理モデル / ○小林 康明 (北大電子研), 後藤田 剛 (名古屋大多元数理), 長山 雅晴 (北大電子研) [概要]

   表皮内にはタイトジャンクションとよばれる強い細胞間結合をもつ表皮細胞の単層が存在し、この層が維持されることで水分の流出を防いでいる。古い細胞は絶えず新しい細胞に置き換わるので、タイトジャンクション形成層は結合を保ったまま細胞の入れ替わりを実現しなければならない。本講演ではこのような細胞の入れ替わりを伴うタイトジャンクションの形成モデルについて発表する。

3. 数理モデルを利用したヒト培養表皮モデルの高機能化 / ○熊本 淳一 (北海道大学 電子科学研究所), 長山 雅晴 (北海道大学 電子科学研究所), 傅田 光洋 (株式会社資生堂 グローバルイノベーションセンター) [概要]

   ヒトの表皮細胞を用いて構築される表皮モデルは基礎研究や新薬の開発など、様々な研究に用いられるリサーチツールであるが、これまで作られた多くの表皮モデルはヒト表皮を十分に模倣できていない。本研究では数理モデルとそのコンピュータシミュレーションを利用し、より良い表皮モデルの構築を目指した。この試みは数理モデルが生命科学の分野において新しい視点を提示し、医学研究にも多大な貢献を成しうることを示唆している。

4. Both spatial and temporal patterns of sensory afferents activity may explain the geometric perception in the fishbone tactile illusion / ○仲谷 正史 (慶應義塾大学), 上坂 正晃 (北海道大学), 最上 紗也子 (慶應義塾大学), 趙 子夏 (北海道大学), 須志田 隆道 (北海道大学), 北畑 裕之 (千葉大学), 長山 雅晴 (北海道大学) [概要]

   We study whether spatial and temporal information encoded in sensory afferents can be utilized to recognize tactile surface roughness and geometric features. For this purpose, we employ a known tactile phenomenon called the fishbone tactile illusion [Nakatani et al., 2011]. To elucidate this phenomenon, we developed a mathematical model that can predict tactile signal processing from a mechanical stimulus to geometric perception by combining a viscoelastic model of skin deformation and a Hodgkin–Huxley-type model for sensory afferent responses. Results of our mathematical simulation revealed that not only distributed spatial information but also phasic temporal information are required to replicate the results of human psychophysics of geometric perception produced by the fishbone tactile illusion.

1. 報告書『数理資本主義の時代』のご紹介 / ○守谷 学 (経産省) [概要]

   経産省と文科省が発行した報告書「数理資本主義の時代」について紹介する。

2. 企業と数学【招待講演】 / ○八丁地 園子 (津田塾大学) [概要]

   企業において、数学がどのように活用されるか、紹介いただく。

3. パネル討論【40分】 / ○佐古 和恵 (NEC), 守谷 学 (経産省), 八丁地 園子 (津田塾大学), 若山 正人 (九州大学) [概要]

   パネルディスカッションを行います。パネリストだけでなく、会場の皆さんの討議への参加も歓迎いたします。

1. 二重指数関数型数値積分公式の理論誤差評価の改善 / ○岡山 友昭 (広島市立大学), 黒木 治世 (エネルギア・コミュニケーションズ) [概要]

   二重指数関数型数値積分公式は非常に高性能な積分近似公式として知られている．また，その数値積分結果を精度保証するためには近似公式の厳密な誤差上界を評価する必要があるが，実際に理論誤差評価も与えられている．ここで誤差は離散化誤差と打ち切り誤差に分けて評価されているが，本研究ではそのうち打ち切り誤差の評価を改善することで，さらに厳しい誤差上界を与える．

2. Henon方程式の非対称解に対する精度保証付き数値計算 / ○浅井 大晴 (早稲田大学大学院 基幹理工学研究科 数学応用数理専攻), 田中 一成 (早稲田大学 理工学術院総合研究所 数理科学研究所), 大石 進一 (早稲田大学 理工学術院) [概要]

   Henon方程式はEmden方程式の一般形である。Emden方程式は対称な凸領域の中心について１つの方向に非対称な解を持たないことが知られている。一方、Henon方程式はあるパラメータについて対称性破壊分岐を生じ、非対称解を持つ。本発表では、Henon方程式の非対称解に対する精度保証付き数値計算の結果を紹介し、分岐構造の考察を行う。

3. ◎チェビシェフ級数を用いたタイムステッピングによる常微分方程式系の精度保証付き数値解法 / ○舩越 康太 (筑波大学), 高安 亮紀 (筑波大学) [概要]

   本講演では, チェビシェフ級数を用いた常微分方程式の初期値問題に対する精度保証付き数値計算手法を紹介する. 問題をある作用素方程式に書き換え, 簡易ニュートン写像の縮小性を示し, 解の精度保証付き数値計算を実行する. さらに, 複数の時間ステップに渡って解を延長するタイムステッピングを行う. 本手法と既存手法との比較から本手法の特長と今後の課題を述べる.

4. BBM方程式の高精度解法の比較 / ○安田 英典 (城西大学理学部) [概要]

   BBM方程式の数値計算としては、４次精度のGregory-Euler-McLaurin schemeを用いた孤立波の計算がよく知られているが、BBM方程式は、元来、undular boreのモデルとして提案されたものである。Undular boreのような場合、メッシュ幅が大きく、高精度解法が期待される性能を出さないこともある。ここでは4次精度の解法について比較を行い、改良点について述べる。

1. 二項モデルにおけるDPを用いた期待効用とPFPPを用いた期待効用の比較（Ⅱ） / ○佐藤 大地 (法政大学理工学研究科), 安田 和弘 (法政大学) [概要]

   日本応用数理学会第15回研究部会連合会において、Angoshtari, et al. [2019] で考えられているPredictable Forward Performance Processes（PFPP）とDynamic Programming（DP）の二項モデル下におけるパラメータが定数で確定的に与えられた場合での期待効用の差に関する比較を行った。本講演ではDPにおいて投資家は初期時刻で市場のパラメータの分布を想定し、各時刻ではそれが可予測になるようなモデルを考え、その期待効用とPFPPでの期待効用の比較を行う。

2. ◎Option Price under Exchangeable Binomial Model / ○千葉 優 (立命館大学大学院 理工学研究科基礎理工学専攻), 赤堀 次郎 (立命館大学), 琉 佳勲 (立命館大学), 仙葉 雄基 (立命館大学) [概要]

   株式のオプション価格がCox-Ross-Rubinstein 型の通常の2項モデルの，ベータ分布下の期待値で与えられるような2項モデルについて，完全な特徴づけをすることに成功したので，それについての報告をする． この研究は，赤堀次郎氏，琉佳勲氏，仙葉雄基氏との共同研究である．

3. ◎二回積分型カーネル関数を用いた偏微分方程式の数値解法について II / ○家田 雅志 (みずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社) [概要]

   偏微分方程式の数値解法としてカーネル関数、特に動径基底関数(RBF)の線型結合を用いるメッシュフリー法がよく知られている。本講演では数理ファイナンスで現れる解析的に解くことが困難な偏微分方程式に対して、その二階微分をRBFで近似する方法を適用し解の振る舞いなどについて議論する。

4. バリア・オプションのGreeksの準解析的計算方法 / ○石谷 謙介 (首都大学東京) [概要]

   本講演では、停止時刻を含むような滑らかではないWiener 汎関数に対する超関数微分の計算方法を紹介する。さらにその応用としてバリア・オプションの1次オーダーのGreeksの準解析的計算方法を提案し、数値検証により有効性を確認する。

1. 東京大学大学院数理科学研究科社会連携講座「データサイエンスにおける数学イノベーション」が目指すもの / ○中川 淳一 (東京大学大学院数理科学研究科) [概要]

   2018年４月から，日本製鉄株式会社の出資により，東京大学大学院数理科学研究科に社会連携講座「データサイエンスにおける数学イノベーション」を開設した.具体的な課題を普遍的なものに置き換え考えるという数学的思考の利点を現実世界で最大限発揮できるよう，（1）数学により抽象化した枠組みのなかで現実世界の問題をとらえ問題の根源を明らかにすること，（2）数学により構築した枠組みをもとに既存の技術概念の再構築を図ること，（3）技術の出口をつくり技術の製造現場や社会への浸透を図りイノベーションに繋げること，これらが当講座の目指すものであり，講座運営のコンセプトと数学とデータの関わり方について，いくつかの事例をもとに紹介する．

1. 離散的かつ非有限生成な全自己同型群をもつ滑らかな射影代数 多様体の一構成 / ○小木曽 啓示 (東京大学大学院数理科学研究科) [概要]

   代数閉体上定義された滑らかな射影代数多様体の全双正則自己同型群が離散的であるとき、それが有限生成群になるか否かは自然な問題である。１次元の場合には肯定的であるが、２次元以上では永らく懸案の問題であった。本講演では、問題の歴史に簡単に触れることで代数幾何学特有の考え方や手法の一端を述べた後、２次元以上任意次元において否定的であることを、K3曲面から具体的に構成することで示したい。如何にして、よくわからない群が有限生成でないことを示すかが問題である。本講演内容の主要部は、2018年のLesieutre氏の結果に触発された、Dinh氏との共同研究に基づく。

1. ◎space-time境界要素法による1次元波動方程式の数値計算 / ○森 理人 (京都大学), 新納 和樹 (京都大学), 西村 直志 (京都大学) [概要]

   1次元波動方程式を支配方程式とする内部Dirichlet境界問題を対象とし、space-time境界要素法に基づく数値計算について述べる。 特に領域変形を伴う問題に適用可能な定式化を行った。 数値実験により、メッシュの柔軟性を保ちつつ安定に計算できることが示された。

2. 2次元波動方程式の種々の時間域積分方程式による解法とその解の性質について / 福原 美桜 (京大情報), 三澤 亮太 (京大工), 新納 和樹 (京大情報), ○西村 直志 (京大情報) [概要]

   2次元波動方程式の外部問題やtransmission問題の種々の時間域積分方程式による数値解法について，著者らが提案してきた周波数域の安定性解析法を用いると，解の挙動に関する定性的な説明や，精度のよい積分方程式の選択の指針などが得られることを示す．

3. ブロック反復法を用いたCharacteristic Basis Function Methodに関する一考察 / ○田中 泰 (京都大学大学院　情報学研究科、三菱電機株式会社), 新納 和樹 (京都大学大学院　情報学研究科), 西村 直志 (京都大学大学院　情報学研究科), 瀧川 道生 (三菱電機株式会社), 米田 尚史 (三菱電機株式会社), 宮下 裕章 (三菱電機株式会社) [概要]

   多方向入射界に対する散乱問題の数値電磁界解析法としてCBFM（Characteristic Basis Function Method）が近年注目されている。本手法はモーメント法と比較して少ない基底関数で高精度な解析結果を得られることが特徴であるが、大規模解析においてはその低減効果が小さくなる問題がある。この問題を解決する方法として、求解に直接解法とブロック反復法を併用する方法を提案し、解析例に基づき効果を検証する。

4. ◎非圧縮性Navier–Stokes方程式に対する粒子法における安定化項の考察 / ○井元 佑介 (京都大学高等研究院), 浅井 光輝 (九州大学大学院工学研究院) [概要]

   安定化ISPH法のような非圧縮性Navier–Stokes方程式に対する半陰解法の粒子法において，圧力Poisson方程式に付加される安定化項について考察を行う．本講演では安定化項が非圧縮性条件と局所密度一定の条件の誤差を重み付きで近似的に最小化する作用があることを示す．さらに，それらの誤差評価の知見から最適な安定化係数を推定する．

1. 素粒子物理学におけるFeynman積分の数値計算 / ○湯浅 富久子 (高エネルギー加速器研究機構), 石川 正 (高エネルギー加速器研究機構), 台坂 博 (一橋大学), 中里 直人 (会津大学), de Doncker Elise (Western Michigan University) [概要]

   ヒッグス粒子の発見により素粒子物理学は、標準模型を超える物理の探索の時代を迎え、場の理論の摂動法による高次輻射補正を含めた精密な理論予測が求められている。高次輻射補正計算では、マルチループを含むFeynman図も対象となりFeynman積分が現れる。本講演では、マルチループFeynman積分を精度よく求めるための数値計算法について述べる。

2. 行列対数関数に対する二重指数関数型公式における積分区間の設定方法について / ○立岡 文理 (名古屋大学), 曽我部 知広 (名古屋大学), 宮武 勇登 (大阪大学), 張 紹良 (名古屋大学) [概要]

   行列対数関数は量子情報科学や機械学習などに現れる計算課題であり，本発表では数値積分による行列対数関数の計算を考える．これまでは数値積分にGauss求積が用いられてきたが，入力行列が悪条件なときは被積分関数が端点で急激に変化し収束性が悪化しうる．この問題を回避すべく，本研究ではGauss型公式の代わりに二重指数関数型（DE）公式に着目する．しかしDE公式を利用するためには，適切な積分区間を設定する必要がある．本研究では，誤差解析に基づいた積分区間の設定方法を提案し，その妥当性を多倍長演算を用いた数値実験により検証する．

3. ユーザー側から見た多倍長精度数値計算環境の現在【招待講演40分】 / ○幸谷 智紀 (静岡理工科大学) [概要]

   標準的なハードウェアがサポートしない長い桁数の浮動小数点演算，即ち，多倍長（精度）計算は，マルチコンポーネント方式のQDライブラリや，多数桁方式のMPFR/GMPライブラリを核として，様々な環境で現在広く使用されるようになっている。本講演では，長くこれらの多倍長演算ライブラリを使用してきた１ユーザからの視点で，この二つのライブラリの特徴と性能を紹介する。最後に多倍長計算の課題についても議論する。

1. On the approximation of eigenvalue problems associated with partial differential equations: examples and counterexamples 【招待講演40分】 / ○Boffi Daniele (Department of Mathematics, University of Pavia) [概要]

   In this talk we review some aspects of the a priori and a posteriori error analysis of eigenvalue problems originating from partial differential equations. We focus on critical aspects where the numerical experiments shed more light on the theoretical results. Examples of such situations include the presence of spurious modes in mixed formulations and in parameter dependent eigenvalue problems, as well as the correct approximation of multiple eigenvalues and/or clusters of eigenvalues. We are interested in guaranteed error estimates and we are going to present an error estimator with efficiency index tending asymptotically to one.

2. ポアソン方程式の解の関数値に関する事後誤差評価 / ○劉 雪峰 (新潟大学・大学院自然科学研究科) [概要]

   ポアソン方程式の境界値問題に対して、領域の内部に指定れる点におけるの解の近似関数値の事後誤差評価方法を検討する。1950 年代、藤田宏氏は$T^\\ast T$の形で現れる微分作用素に関わる境界問題に対して一点における関数値の評価方法を提案したことがある。しかし、長い間に当該方法の有限要素法への応用が見逃されてきた。この研究では、藤田氏の方法を利用することで、有限要素解の関数値の誤差評価方法を検討する予定である。

3. $H_0^1$ 射影誤差に対する2次の誤差評価の最良定数の包含方法について / ○木下 武彦 (九州大), 渡部 善隆 (九州大), 山本 野人 (電通大), 中尾 充宏 (早稲田大) [概要]

   本講演では多項式空間への $H_0^1$ 射影の2次の誤差評価に対する最良定数の包含方法を述べる． この定数は Lagrange 型の有限要素法に対する誤差評価にも適用できる場合がある． 本結果を利用する事で，2階楕円型境界値問題に対する解の精度保証付き数値計算が従来よりも高精度に検証できると期待される．

1. ニワトリ胚中胚葉細胞集団の動的な移動秩序形成 / ○田崎 創平 (特定国立研究開発法人理化学研究所) [概要]

   ニワトリ胚の中胚葉組織は、胚の内側に陥入した間充織細胞がエピブラストと内胚葉の間の空間を広がっていくことで形成される。しかし、足場の限られた3次元空間内の細胞移動様式を含め、中胚葉形成機構の詳細は不明な点が多い。我々は、透明化や高解像度3次元ライブイメージング、マルチスケールなデータ解析、数理モデルシミュレーションの協働により、中胚葉細胞の集団移動の特徴的な秩序として動的網目様構造を見出した。

2. 直鎖状ユビキチン鎖を足場とした免疫シグナル制御に関する数理モデル解析 / ○及川 大輔 (大阪市立大学大学院医学研究科分子病態学) [概要]

   ユビキチンのN末端を介した特殊な連結様式により形成される「直鎖状ユビキチン鎖」は、NF-Bを含む自然免疫応答の新たな制御機構として、近年、大きな注目を集めている。現在我々は、直鎖状ユビキチン鎖の生成を担うLUBAC複合体の活性を特異的に阻害する新規化合物の開発を進めており、今回は、数理モデル解析により得られた知見について、ウエットの観点からその生理的意義について紹介したい。

3. T細胞におけるLUBACを介したNF-κB活性化機構の数理的解析 / ○畑中 尚也 (大阪大学数理・データ科学教育研究センター) [概要]

   生体内で数百にも及ぶ機能を制御するタンパク質であるNF-κBは刺激依存的に活性化される．TCR（T細胞受容体）を介したNF-B活性化においては、LUBACによるCBM複合体の直鎖状ユビキチン化が重要であることが指摘されている。このとき，CBM複合体を形成するCARMA1、BCL10、MALT1のユビキチン化にはタイミングのずれが生じることが実験で確認されているが，その生物学的意味は明らかになっていない．本研究ではNF-κBの活性化におけるLUBACやCBM複合体の役割について，数理モデルを用いた解析結果を報告する

4. ガン免疫の環境依存型モデルEDMにおける局所消滅性に関する評価 / ○道工 勇 (埼玉大学教育学部数学教室) [概要]

   ガン免疫応答を記述する環境依存型確率モデルEDMにおいて, ガン細胞が免疫細胞から成るエフェクター群により局所的に駆逐される様子に対応する局所消滅性を呈することが分かっている。今回は定性的性質の解析ではなく, その様子の定量的な記述を可能にする, ほとんど確実に局所的に消滅する現象のパラメータ依存表記を紹介する.

1. ランダム二分木の分岐構造と中心極限定理・大偏差原理 / ○山本 健 (琉球大学理学部) [概要]

   木構造は様々な分野で活用される。木の確率空間として最も単純なのが、一定サイズの二分木に一様な確率的な重みを与えた「ランダムモデル」である。二分木の枝分かれ構造を調べるHorton-Strahler解析という手法では、各頂点に次数という数を割り当て、二分木を次数ごとに枝に切り分ける。本講演では、各次数の枝の本数に対する中心極限定理および大偏差原理について述べる。証明の細部よりも、問題の背景や意義を中心に説明する予定である。

2. 漢字の形に関するベキ乗則について / 太田 守洋 (琉球大学大学院理工学研究科), ○山本 健 (琉球大学理学部) [概要]

   本講演では、漢字の線の長さと画数に注目して、漢字の形の複雑さの定量化を試みる。コンピュータのフォントを用いて各漢字の線の長さを計測すると、線長と画数の間にベキ乗則の関係がみられることが分かった。このベキ乗則に関して、フラクタルに基づく説明やベキ指数に対するスケーリング関係式などについて議論する。

3. ◎1次元3状態自由量子ウォークの3つの基本性質について / ○劉 家欣 (愛媛大学), 黒田 久泰 (愛媛大学) [概要]

   量子ウォークは本来，時間発展につれ、それぞれの方向へ確率的ランダムに1 単位移動するモデルである．本研究では，それぞれの方向に移動する能力が変化できるように仕様を変えることで，「移動速度」という概念を定義した． また，量子ウォークを2 状態で議論するケースが圧倒的に多かったが，本研究では3 状態の量子ウォークをターゲットにして議論する．

1. ◎Lagrange力学におけるエネルギー保存数値解法の一般的記述について / ○石川 歩惟 (神戸大学), 谷口 隆晴 (神戸大学, JST さきがけ) [概要]

   対称性に基づく方法は，解析力学においてエネルギー保存則がある関数の時間対称性から示されることを利用し，エネルギー保存性を保つスキームを設計する方法である. この方法はLagrange力学，Hamilton力学の両方の場合について個別に提案されたが，それぞれで得られるエネルギー保存スキームの対応関係は分かっていない．本講演では，Legendre変換に着目した対称性に基づく方法の等価条件について述べる．

2. ◎Hamilton系に対するSAV法 / ○剱持 智哉 (名古屋大学大学院工学研究科) [概要]

   SAV (scalar auxiliary variable) 法とは, 勾配流方程式に対する時間離散化手法の1つであり, 補助変数を導入することによって, エネルギー散逸性に対応する性質を持つ線形スキームを構築する手法である. 本研究では, SAV法をHamilton系に対して拡張することを考察する. 講演では, Hamilton系に対して, 線形でありながら, エネルギー保存性に対応する性質を持つスキームを導出する.

3. ◎動的境界条件を伴うCahn-Hilliard系に対する構造保存スキームの解析について / ○奥村 真善美 (大阪大学), 深尾 武史 (京都教育大学), 降籏 大介 (大阪大学), 吉川 周二 (大分大学) [概要]

   動的境界条件を伴うCahn-Hilliard方程式に対し, 離散変分導関数法(DVDM)を用い, 構造保存スキームを構成した. DVDMでは, 方程式を特徴づけるエネルギーをどう離散化するかが重要となる. その離散化の仕方を従来のものから修正し, 適切な部分和分公式を用いることで, 境界の外向き法線方向微分を中心差分で近似した構造保存スキームを構成した. 本講演では, 提案スキームの安定性, 解の存在及び誤差評価, そして, 数値実験結果について報告する.

4. ◎再生核近似を用いた前進後退確率微分方程式の数値解析 / ○田中 俊介 (東京工業大学情報理工学院数理・計算科学系) [概要]

   前進後退確率微分方程式は未来の状態が条件として与えられている確率微分方程式であり、ファイナンスでは近年重要なツールになっています。その方程式の解法として、条件付き期待値を関数近似する解法が主流となっています。今回、その関数近似として放射基底関数の１つであるガウスカーネルを用いた関数近似による解法を提案します。また、ガウスカーネルを用いることの有効性と近似の際の安定性と収束性についても示します。

1. ◎メッシュレス法における境界条件の取り扱いが解析精度に及ぼす影響 / ○藤田 宜久 (立命館大学), 伊東 拓 (日本大学), 生野 壮一郎 (東京工科大学), 中村 浩章 (核融合科学研究所), 仲田 晋 (立命館大学) [概要]

   メッシュレス法の離散化に用いられるMLS近似の形状関数はデルタ関数特性をもたない．故に，境界条件を導入するためにラグランジュの未定乗数法が用いられてきた．しかしながら，拘束条件の数だけ解くべき連立一次方程式の未知数が増加する問題がある．そこで，変数低減法により未知数を削減したメッシュレス法を開発し，一般固有値問題の離散化に用いた．加えて，境界条件の取り扱いによる違いが解析精度に及ぼす影響も評価した．

2. 2次元定常電磁波散乱問題へのCollocation EFGM-BEMの適用 / ○齋藤 歩 (山形大学大学院理工学研究科), 高山 彰優 (山形大学大学院理工学研究科), 神谷 淳 (山形大学大学院理工学研究科) [概要]

   電磁波シミュレーションには，有限差分時間領域（FDTD）法が広く使われている．しかしながら，FDTD法は一般に陽解法であるため，定常状態になるまでに多大なタイムステップを要してしまう．FDTD法と異なった電磁波シミュレーション法として，本講演ではCollocation EFGMとBEMの併用法を2次元定常電磁波散乱問題に適用することを提案し，同法の性能を数値的に評価した結果を示す．

3. Data driven derivation of partial differential equations / ○リュウ ウ (京都大学), 小山田 耕二 (京都大学), 坂本 尚久 (神戸大学), 水野 翔太 (京都大学) [概要]

   It is important to consider how to derive unknown partial differential equations from observed data, which deductive reasoning is mainly used to derive. In the past 10 years, cost reductions of sensor, data storage and computational resource have made data driven derivation methods possible. Therefore, the development of several innovative methods of characterizing the high-dimensional data generated from the experiment has been easily. In this paper, a new method of data driven derivation of partial differential equations from observed data is proposed and verified by some case study analysis using one-dimensional data which is artificially made by numerical solution. In this method, partial differential equations is derived by using LassoRegression and multiple linear regression analysis to extract partial differential term from several prospective terms. Additionally, two types of dataset are used in each partial differential equation to verify the difference in noise resistance when they are acquired by different means. As a result of the experiment, derivation of partial differential equation was successful on all case studies, and noise resistance has been particularly higher when Reaction-diffusion equation was used. Moreover, It has been verified that this method can be more effective when the integration of several observed datas in different conditions is applied. According to the verification, it indicates that the proposed method is applicable to three-dimensional data like practically observed data.

1. Mathematical analysis of reservoir computing / ○本多 泰理 (東洋大学) [概要]

   時系列データに対する機械学習法の一であるreservoir computingについて数学解析を行う。特にEcho state network上での挙動について、グラフ連続極限の上での解析を行う。

2. 圧電体における表面波速度の摂動 / ○田沼 一実 (群馬大学・理工学部), 中村 玄 (北海道大学・理学研究科), Xiang Xu (Zhejiang University) [概要]

   圧電体方程式は,弾性・圧電・誘電テンソルを係数にもつ４つの方程式の連立系となり,弾性場と電場との相互作用をもたらす圧電効果ゆえ,圧電材料の開発等に応用は広い．圧電体が横等方性を有するとき,Bleustein Gulyaev波(BG波)とよばれる表面波が存在するが,その伝播速度は圧電テンソルの1成分のみに依存する.そこで圧電・弾性・誘電テンソルが横等方から任意の非等方な状態に摂動した場合に,表面波速度がBG波速度からどのように変化するかを一次摂動公式にて表現する.非等方弾性体方程式に対するStroh formalismを整理，応用する．

3. ◎閉曲線上で定式化されたKuramoto-Sivashinsky方程式の回転波の分岐 / 矢崎 成俊 (明治大学理工学部), 上形 泰英 (明治大学大学院理工学研究科), ○小林 俊介 (明治大学大学院理工学研究科) [概要]

   時間発展する平面閉曲線の法線方向速度を，Kuramoto-Sivashinsky方程式に由来する形で与えた場合の解のダイナミクスについて局所分岐理論の立場から考察する． この数理モデルは，床面付近における紙のすす燃焼を再現することが最近報告されている． 本講演では，時間とともに拡がっていく円周解の一次分岐解として，回転波が得られることを報告する．

1. ◎PositのOpenCL移植による津波シミュレーションの性能評価 / ○村上 雄樹 (会津大学), 河野 郁也 (会津大学), 中里 直人 (会津大学) [概要]

   OpenCLを用いてPosit形式の浮動小数点計算を行い，津波シミュレーションにて従来のIEEE 754形式との性能評価を行った結果について述べる． Positは，2017年にGustafsonらによって発表された浮動小数点形式の一種であり，従来の仮数部と指数部にあたるbitが可変になっている． 津波シミュレーションには浅水方程式を解くMOST法を採用した．

2. AVX-512IFMAを用いた多倍長整数乗算の高速化 / 枝松 拓弥 (筑波大学), ○高橋 大介 (筑波大学) [概要]

   本研究ではAVX-512IFMA命令を使⽤した多倍⻑整数乗算を実装し，Cannon Lakeプロセッサで性能評価を⾏った． AVX-512IFMAは⼀命令で整数の積和演算が可能であり，オペランドとして64bitのうち52bitの整数を取るため，残りの12bitをキャリーを蓄積する空間として有効活⽤できる（reduced-radix表現）． さらに⾼速な乗算アルゴリズムの⼀つであるKaratsuba法を適⽤した． その結果，本研究の実装は任意精度算術ライブラリであるGMPに対し最⼤2.97倍の性能向上を達成した．

3. 尾崎スキームによる高精度かつ再現性のあるBLAS実装 / ○椋木 大地 (理化学研究所), 荻田 武史 (東京女子大学), 尾崎 克久 (芝浦工業大学), 今村 俊幸 (理化学研究所) [概要]

   本講演では尾崎らにより提案された高精度行列積計算手法（尾崎スキーム）によるBLASルーチンの実装を報告する．本手法は標準の浮動小数点型による入出力を想定し，精度が可変な高精度計算と実行環境に依存しないビットレベルの計算結果の再現性を実現する．Double-double等の多倍長精度演算手法と比べ，問題の特性によってはより高速かつ高精度を実現できるほか，既存の標準BLAS実装を用いて実装可能であるため開発コストが低い利点がある．本講演ではCPU・GPUにおける実装・性能と，疎行列反復改良法への応用を紹介する．

4. 多倍長精度浮動小数点回路によるパイプライン型アクセラレータの性能評価 / ○中里 直人 (会津大学), 台坂 博 (一橋大学), 石川 正 (高エネルギー加速器研究機構) [概要]

   我々は、多倍長精度浮動小数点演算を必要とするアプリケーションを高速化するためのハードウエアアクセラレータを実装するため、 FPGAの特徴にあわせて回路設計することで、できるだけ少ない回路資源でbinary128フォーマットに対応した浮動小数点演算回路を設計した。 本講演では、最適化した複数の演算器を組み合わせることで演算カーネルをパイプライン型アクセラレータとして実現し、 最新FPGAでの性能評価について報告する。

1. 非線形遅延微分方程式の周期解の精度保証 / ○大石 進一 (早稲田大学) [概要]

   遅延Duffing方程式を中心として、その分数調波解など様々な周期解の存在の計算機援用証明を精度保証付き数値計算によって与える。

2. ◎楕円型方程式の弱解に対する正値性証明法 / ○田中 一成 (早稲田大学) [概要]

   本公演では半線形楕円型方程式を対象とし、精度保証された弱解の正値性検証法を紹介する。前提条件は近似解が十分正値関数に近いこと、そしてその近似解の近傍に1階のソボレフノルムの意味で弱解の存在性が確認されていることである。このとき誤差半径に関するある不等式が満たされれば真解の正値性が従う。計算コストの面でときに厄介となる近似解の正値性証明を行う必要がないことが本手法の特徴である。

3. ◎線形熱方程式の解と半離散近似解との誤差評価の改善 / ○水口 信 (早稲田大学), 中尾 充宏 (早稲田大学), 関根 晃太 (東洋大学), 大石 進一 (早稲田大学) [概要]

   線形熱方程式の解と半離散近似解との誤差評価の改善を考える. 本評価は例えば, 放物型偏微分方程式の精度保証付き数値計算に応用されており, 解の存在検証とその厳密なノルム評価のために用いられている. 楕円型偏微分方程式の近似理論に用いられるAubin-Nitscheのトリックを駆使して評価することで, 既存の結果にくらべシャープな評価を提案する.

4. 空間3次元Allen-Cahn方程式の正値時間大域解に対する精度保証付き数値計算法 / ○松嶋 佑汰 (早稲田大学大学院), 田中 一成 (早稲田大学), 大石 進一 (早稲田大学) [概要]

   ３次元領域におけるAllen-Cahn方程式の正値時間大域解を対象とし、優解劣解法に基づく精度保証付き数値計算法を提案する。一般に３次元偏微分方程式に対する精度保証付き数値計算の実装には１次元や２次元の問題に比べメモリ等の膨大な計算コストを必要とする。優解劣解法を用いることで近似解計算の数倍程度にメモリ使用量をおさえ、対象問題の正値時間大域解の包含が得られることを報告する。また、本手法が応用可能な範囲について考察した結果も併せて報告する。

1. シフト付きLR変換を与えるdLVs反復の収束性について / ○植田 旭 (京都大学), 岩崎 雅史 (京都府立大学), 中村 佳正 (京都大学) [概要]

   数理生物分野で有名なロトカ・ボルテラ (LV: Lotka-Volterra)系の時間離散版に基づいて、 対称3重対角行列のLR変換を与えるdLV (discrete LV)反復が定式化されている。 dLV反復に対して原点シフトが導入されたdLVs (dLV with shift)反復も報告されているが、 その収束性については議論されていない。 本講演では、適切な補助変数を介してdLVs反復が有する有界性と単調性を見い出し、 dLVs反復の固有値への収束性について明らかにする。

2. ◎離散相対論的戸田方程式が与えるシフト付きLR変換について / ○簑下 尚也 (京都府立大学), 岩崎 雅史 (京都府立大学), 山本 有作 (電気通信大学) [概要]

   可積分系方程式が行列の固有値問題と関連付けられた研究は少なくな いが、離散相対論的戸田方程式についてはこれまで議論が進められていない。本講演では、帯行 列のシフト付きLR変換を与える漸化式の１つが、離散相対論的戸田方程式であることを示す。離 散相対論的戸田方程式と帯行列のシフト付LR変換を結び付ける際に、パラメータを導入して非自 励化したLaurent双直交多項式がポイントとなる。数値例を通じて、帯行列の固有値が求められ ることも併せて報告する。

3. 一般内積における直交化のためのMGS-HP法の誤差解析 / ○山本 有作 (電気通信大学), 今倉 暁 (筑波大学) [概要]

   対称正定値行列Aにより定められる内積の下での直交化は，一般固有値問題をはじめ様々な応用で現れる。修正グラム・シュミット（MGS）法を使う場合，従来はAとベクトルとの積が2n回（n：ベクトルの本数）必要とされてきたが，近年，今倉により，行列ベクトル積をn回に削減でき，かつ，これらをまとめて1回の行列行列積として計算できるMGS-HP法が提案された。本講演ではMGS-HP法に対する誤差解析の結果を報告する。

4. ◎未知の行列とその複素共役転置を同時に含むSylvester方程式について / ○佐竹 祐樹 (名古屋大学), 曽我部 知広 (名古屋大学), 剱持 智哉 (名古屋大学), 張 紹良 (名古屋大学) [概要]

   T-congruence Sylvester方程式は，未知の行列とその転置を含む行列方程式であり，ベクトル化により，テンソル積構造を係数行列にもつ連立１次方程式に帰着される．近年，この連立１次方程式に適切な線形作用素を施してから行列化を行うことでLyapunov方程式や一般化Sylvester方程式（いずれも未知の行列の転置を含まない）に変換できることが示されてきた．本講演では，T-congruence Sylvester方程式の拡張である*-congruence Sylvester方程式（未知の行列とその複素共役転置を含む）に対して，同様の理論を適用する際の問題点と解決策を示し，*-congruence Sylvester方程式が一般化Sylvester方程式に変換できることを示す．

1. より詳細な感染症流行データ解析に向けた、感受性の時系列変化によって引き起こされる感染症流行ダイナミクスの解析 / ○大森 亮介 (北海道大学), 中田 行彦 (島根大学) [概要]

   感染症の流行制御は社会的課題として広く認識されているものの、感染症流行ダイナミクスの複雑さからその実行は未だ困難なものとなっている。感染症流行を記述する最も基本的な数理モデルであるSIRモデルにより、流行ダイナミクスの理解が進んできたが、そのモデルの単純さから、観察される力学系を十分に理解できておらず、観察データの誤解を生む恐れがある。その一例として、宿主の病原体感染に対する感受性の時系列変化が挙げられる。多くの病原体に対して宿主は感染後に免疫を獲得し再感染を免れようとするが、その免疫は恒久的に持続するものではなく、免疫による防御レベルは時間とともに低下する（感受性が上昇する）。その低下により再感染が起きることがあり、再感染により再び免疫防御レベルが上昇する（感受性が下落する）。この様に、同じ宿主個体においても、時間とともに免疫防御レベルは変動する。本講演では、この時間とともに変動する感受性が、基本的な数理モデルで理解された流行ダイナミクスと本質的に異なる挙動を引き起こす例を紹介する。

2. 偏微分方程式のリミット・トーラス解に対する位相縮約法 / ○河村 洋史 (海洋研究開発機構) [概要]

   非圧縮性流体方程式における進行振動対流解の位相縮約法を定式化する．本手法は偏微分代数方程式におけるリミット・トーラス解の位相縮約法である．各点・各時刻に加えられた弱い摂動に対する進行振動対流の時空間的な位相応答を定量化する位相感受関数を導出し，弱く熱的に相互作用する一対の進行振動対流の間の時空間的な位相同期現象を解析する．

3. ◎２次元デイジーワールドモデルにおける棲み分けパターン / ○陰山 真矢 (関西学院大学), 八木 厚志 (大阪大学) [概要]

   デイジーワールドモデルは，植生と気候の相互作用を記述する最も単純な地球システムモデルのひとつである．本講演では，２次元長方形領域上のデイジーワールドモデルを扱い，それに対するいくつかの解析的結果と数値シミュレーションによって得られたパターン解を紹介する．さらに，それらの結果から見ることができる，惑星の温度恒常性システムと植生の空間分布パターンとの関係について述べる．

4. 大域的かつ非対称局所的に相互作用した双安定素子集団の超離散方程式に基づく考察 / ○大森 祥輔 (早大理工), 山崎 義弘 (早大理工) [概要]

   粘着テープの剥離等に見られる、大域的かつ非対称局所的な双安定素子集団の力学モデルに対して、超離散化の手法を用いて超離散化方程式を導出し、この方程式が確率セルオートマトンとして、双安定素子集団の振る舞いを再現できることを示す。また、同値な確率セルオートマトンを与えることで、より少ない条件で現象を表現できる事を示す。

1. カオス尺度の拡張とその効果について / ○井上 啓 (山陽小野田市立山口東京理科大学工学部), 真尾 朋行 (東芝情報システム株式会社・京都大学大学院情報学研究科), 奥富 秀俊 (東芝情報システム株式会社), 梅野 健 (京都大学大学院情報学研究科) [概要]

   エントロピー型カオス尺度（以下，カオス尺度と略）は情報理論の観点から導入されたカオスを定量化する指標であり，力学系に関する情報が時系列しか得られない場合でも直接計算可能である．本講演では，一般の多次元においてカオス尺度の定義を拡張し，拡張されたカオス尺度の極限がある典型的な条件の下で全リアプノフ指数の総和と一致することを示す．また，計算精度を維持したまま拡張されたカオス尺度の計算量を減少させる方法についても検討する．

2. カオス力学系によるエントロピーの変換公式とその相互情報量について / ○梅野 健 (京都大学大学院情報学研究科) [概要]

   2018年の年会では、カオス力学系によりベイズの逆確率に起因するエントロピーの平均がデータのリアプノフ指数とKL情報量に分解することを示した。その時のKL情報量は入力データの確率分布と出力データの確率の差である。その後、講義等の様々な機会にて当該公式(KSエントロピーに相当する情報量がリアプノフ指数とKL情報量に分解できる)を説明することがあったが、その公式導出の前提であるカオス力学系により変換されるエントロピーの変換公式が解らないという声を多数いただいた。本講演では、その多対１のカオス写像によるエントロピーの変換公式そのものの導出およびその説明を行う。またその応用として、エントロピー変換公式を繰り返し適用した場合の、相互情報量(情報の流れ)についての評価を行う。

3. 心拍間隔（RRI）データからの力学系のアトラクタ再構成の試み / ○真尾 朋行 (京都大学/東芝情報システム株式会社), 奥富 秀俊 (東芝情報システム株式会社), 梅野 健 (京都大学) [概要]

   自律神経の関与によって生じる心拍間隔の変動（心拍変動）は，自律神経活動の分析・評価に用いられる．いっぽう最近の研究で，てんかん発作時の典型的な脳波データから時間遅れ座標系への埋め込みを用いてアトラクタを再構成し，1次元力学系として理解する取り組みについて報告がある．本研究では，同様の方法を用いて心拍間隔（RRI）データからアトラクタの再構成を試み，心拍変動を生じさせる普遍的なダイナミクスについて考察する．

4. ◎Sturm-Liouville型微分方程式からできる直交関数系をカオスの観点から見る / ○杉本 哲 (京都大学情報学研究科数理工学専攻), 梅野 健 (京都大学情報学研究科数理工学専攻) [概要]

   今年の3月に実施された日本応用数理学会ではLegendre多項式などの物理学でよく用いられる直交関数系の系列に関して混合性が成り立つかどうか発表した。さらに、相関と初期値鋭敏性を鞍点法という近似手法を用いて計算し、数値計算の結果と一致することを示した。一方、こうした直交関数系はStrum-Liouville型微分方程式の解として登場するもので、調べる直交関数系の拡張ができそうである。今回はその拡張にあたりわかる範囲で発表する。

1. ◎置換トリチウムのベータ崩壊によるポリエチレンの構造変化の粗視化分子動力学シミュレーション / ○LI HAOLUN (京工繊大院工芸), 藤原 進 (京工繊大院工芸), 中村 浩章 (核融合研、名大院工), 水口 朋子 (京工繊大院工芸) [概要]

   トリチウム（T、水素の同位体の一種）はベータ崩壊によりヘリウム３に壊変する。高分子材料がトリチウム水にさらされると、水素からトリチウムへの置換反応が起こる。ポリエチレン中の置換したトリチウムがヘリウム３に壊変した際の構造変化を解析するため、一本のポリエチレン鎖を対象として、折り畳まれた秩序構造からランダムに水素を取り除き、粗視化分子動力学シミュレーションを行い、計算結果の分析を行った。

2. アモルファス炭素壁への水素入射の分子動力学シミュレーション / ○澤田 拓弥 (名古屋大学), 中村 浩章 (名古屋大学,核融合研究所), 齋藤 誠紀 (山形大学), 澤田 圭司 (信州大学), 土生 柊 (名古屋大学) [概要]

   核融合プラズマ装置のダイバータ板として用いられている炭素材から生じる水素原子・分子の回転・振動準位の分布を調べる必要がある。実験では得ることが困難であるため分子動力学法を用いた定量的なデータが望まれている。そこでアモルファス炭素壁をターゲットとして高エネルギーの水素を入射する分子動力学計算を行い、壁から発生する水素原子・分子の回転・振動準位を得ることができた。その結果を報告する。

3. ◎軸対称高温超伝導膜内遮蔽電流密度解析：等価回路法の適用 / ○山口 敬済 (総合研究大学院大学), 高山 彰優 (山形大学), 神谷 淳 (山形大学), 大谷 寛明 (総合研究大学院大学) [概要]

   高温超伝導体（HTS）は電圧降下なしに大電流を流すことができるため，様々な分野で応用されている．本研究では，等価回路法に基づくシミュレーション・コードを開発し，軸対称HTS膜中の遮蔽電流密度を解析する．さらに，同コードを用いて臨界電流密度測定法やHTSを用いたペレット入射法を数値的に再現し，それらの性能を調べる．

4. 超伝導リニア加速システムの数値シミュレーション：ペレット入射速度の高速化 / ○高山 彰優 (山形大学), 山口 敬済 (総合研究大学院大学), 齋藤 歩 (山形大学), 神谷 淳 (山形大学) [概要]

   本研究では，高温超伝導リニア加速システムの有限要素法シミュレーション・コードを開発し，同コードを用いて，同システムによる核融合炉への燃料ペレット入射速度の高速化法を提案する．

1. 多孔質媒質中の乱流に対するkとεの解軌道及びそれらの初期状態依存性 / ○鈴木 岳人 (青学大理工) [概要]

   多孔質媒質中の乱流を取り扱うk-εモデルにおいて、それら二変数の相空間での解軌道をまず示す。ここでは両変数に共通のヌルクラインが生じることが重要である。加えて、初期状態とそのヌルクラインの位置関係によって解の運動方向、すなわち乱流の時間発展の様子が大きく変わることも、この系の特徴として強調したい。

2. 流体構造連成を考慮した形状最適化 / ○片峯 英次 (岐阜工業高等専門学校), 豊場 亮太 (長岡技術科学大学(学生)), 三宅 悠暉 (金沢大学(学生)) [概要]

   定常の流体構造連成場問題に対して，弾性場領域において剛性最大化を目的とする，あるいは流れ場領域において散逸エネルギー最小化を目的とする二つ形状最適化問題を取り上げて，その解法を紹介する．問題を定式化し，随伴変数法を利用して形状修正の感度となる形状勾配密度関数を導出した．導出した感度に基づいて力法（あるいは$H^1$勾配法）を適用し，Freefem++を利用して解析した数値解析結果を紹介する．

3. ◎A micromechanical simulation of crack propagation in inhomogeneous composite solids / ○Alfat Sayahdin (Kanazawa University), Kimura Masato (Kanazawa University) [概要]

   The simulation of crack propagation in inhomogeneous solids has been presented. Here, we applied two kinds of the different material characteristic. The used numerical study was adaptive finite element method with a phase field approach.

4. 水素脆化効果を考慮したき裂進展モデルの解析 / ○高石 武史 (武蔵野大学) [概要]

   フェーズフィールドを用いたき裂進展モデルを拡張し，水素による材料の脆化の効果を取り入れ，水素原子分布変化のき裂進展への影響を調べた．このモデルでは，水素原子の分布と材料の変位，フェーズフィールドが材料の脆化や水素原子の拡散という材料パラメータを介して結びついており，観測の難しいき裂進展時のき裂先端近傍での水素原子分布を調べることができる．

1. 年齢構造化SIRS感染症モデルの解析 / ○大桑 健人 (東京大学数理科学研究科), 稲葉 寿 (東京大学数理科学研究科), 國谷 紀良 (神戸大学大学院システム情報学研究科) [概要]

   本研究では，免疫の減衰を考慮した感染症の時間発展を記述する年齢構造化SIRSモデルの解析を行う．一般に感染症モデルに対して，基本再生産数R0なる閾値が定まる．そこで本モデルでは，R0>1の場合にエンデミック定常状態が少なくとも1つ存在して，比例混合仮説の下，前方分岐したエンデミック定常状態が局所漸近安定となることを示した．さらにR0>1のとき，モデルの定める力学系は比例混合仮説のもと強パーシステントとなることが示された．

2. ◎Spread of mosquito borne diseases and the effects of sexual transmission on Zika Virus / ○Sasmal Sourav Kumar (Aoyama Gakuin University) [概要]

   Mosquitoes are one of the deadliest animals in the world. More countries are reporting their first outbreak of mosquito borne disease, especially dengue. Sustained mosquito control efforts are important to prevent outbreaks from these diseases. However, unlike other mosquito borne disease, Zika can be transmitted through direct sexual contacts. There is an ongoing debate, whether Zika to be classify as a sexually transmitted infection (STI). As a public health perspective, it is very important to understand whether sexual transmission of Zika is sustained or sporadic. The extent of the sexual transmission of Zika is unknown, and it is of both interest and importance to better understand and quantify the relative role of the sexual transmission among the overall transmission of Zika. Moreover, mice experiment suggests that sexual transmission may lead to higher risk of microcephaly, associated with Zika virus. Our study objective is to quantify the relative role of sexual vs vector transmission in the spread of Zika virus, and identify the important factors, which fits real epidemic data.

3. 異なる境界条件下での空間拡散を伴う感染齢構造化SIRモデルの解析 / Chekroun Abdennasser (University of Tlemcen), ○國谷 紀良 (神戸大学大学院システム情報学研究科) [概要]

   感染症の地理的伝播を考察する上で，空間拡散を伴う反応拡散方程式系の数理モデルを構築することが現実的と考えられる．本研究では，感染後の経過時間を意味する感染齢を第2変数としてもつ感染齢構造化SIRモデルに対し，拡散項を導入することで拡張された非線形放物型偏微分方程式系の解析を行う．その際，ノイマン境界条件とディリクレ境界条件の2通りの境界条件を考え，基本再生産数Roが解の漸近挙動に与える影響の比較考察を行う．

4. 免疫減衰をもつ感染症数理モデルにおける周期流行 / ○中田 行彦 (島根大学), 大森 亮介 (北海道大学), Yang Liu (東北師範大学) [概要]

   個体の免疫減衰や再感染は、感染症の周期的流行をはじめとする複雑なダイナミクスを生み出すことが知られてきた。感染症数理モデルの数値シミュレーションによって、周期解はよく観察されるものの、その解挙動の定性的理解は大変限定的なものとなっており、周期的流行を見せる多くの感染症の理解の障害となっている。数理解析を困難にしている理由として、（一般的な定式化では）感染症数理モデルは、無限次元の非線形力学系を構成することがあげられる。本発表では、時間遅れをもつ微分方程式によって定式化されるSIRS型の感染症数理モデルを題材に、最近得られた周期解の存在性や安定性の結果について発表する。本研究は、大森亮介氏（北海道大学）、Yang Liu氏（東北師範大学）との共同研究に基づく。

1. 離散二次元戸田方程式によるタイリングの数え上げ / ○上岡 修平 (京都大学) [概要]

   アステカダイヤモンドのタイリングは厳密な数え上げが可能な組合せ論的オブジェクトである．本講演では離散可積分系の組合せ論への応用として，離散二次元戸田方程式を用いてアステカダイヤモンドのタイリングを数え上げるための方法について解説する．特に同方程式の任意の解から，タイリングの母関数（分配関数）とその積表示を構成するための手法を示す．

2. Krawtchouk 多項式で表せる optimal design / ○飯田 明寛 (京都大学) [概要]

   optimal design とは, 限られた実験回数の中でもっともよい回帰式が得られる観測点, および, 実験回数の割合のことである. カノニカルモーメントを用いて, 上記の最適化問題を定式化することで直交多項式の零点を用いて書き下せるoptimal design がいくつかあることが知られている. 本研究では, 新しい複合的な optimal design を考え, それに含まれるパラメータを特別な値に定めた場合に Krawtchouk 多項式を用いて最適解を書き下せることを示す.

3. ◎離散二次元戸田方程式を応用した平面分割の解析 / ○伊藤 眞麻 (京都大学大学院情報学研究科), 上岡 修平 (京都大学大学院情報学研究科) [概要]

   平面分割は積型母関数が豊富に存在することで知られる組合せ論的オブジェクトである．本公演では，離散二次元戸田方程式を組合せ論的に解釈することにより平面分割の積型母関数を構成する手法を紹介する．また，Askeyスキームに属する直交多項式をスペクトル変換して得られる解から実際に積型母関数を構成する．

4. ◎離散Gray-Scottモデルの時空パターンと平衡解のTuring不安定性 / ○松家 敬介 (武蔵野大学) [概要]

   Gray-Scottモデルは自己触媒反応の数理モデル化として知られている反応拡散系である.これまでの研究で, Gray-Scottモデルの超離散化可能な離散化とその差分方程式系のパラメータを変えることで様々な時空パターンを与える解が得られている.本稿では, これまでの研究で得られている離散化に対してTuring不安定性を議論し, その差分方程式系の解が示す一部の時空パターンがTuring不安定性によって切り替わることを見出した.

1. ◎ブロック積型反復解法の近似解精度劣化の原因解析と高精度化 / ○倉本 亮世 (筑波大学 システム情報工学研究科), 多田野 寛人 (筑波大学 計算科学研究センター) [概要]

   複数右辺ベクトルを持つ線形方程式の反復解法として，ブロック積型反復解法がある．ブロック積型反復解法は同問題を効率的に解くことができる一方で，右辺数の増加によって近似解精度が劣化することがある．漸化式で計算する残差行列と真の残差行列の間に乖離が発生することが，精度劣化の主要因である．本発表では，ブロック積型反復解法において乖離が発生する原因について解析を行い，近似解精度向上法の提案を行う．

2. 特異対称系でのGMRES法とRRGMRES法の数値検証と、RRGMRES(m)法の収束定理 / ○杉原 光太 (国立情報学研究所), 速水 謙 (国立情報学研究所　総合研究大学院大学) [概要]

   特異対称系において、右辺が係数行列の値域に属さない場合はMINRES法を適用するのが丸目誤差が無い場合は望ましい。しかし、丸目誤差のある計算では，GMRES法や Range Restricted GMRES(RRGMRES)法などを用いる方が収束性がよい。本発表では両手法を数値実験により比較し、 手法選択の指標を与える。また、特異系に対する収束判定において注意すべき事を述べる。さらに、RRGMRES法においてリスタート計算を行うRRGMRES(m)法を特異対称系に適用した場合の収束定理を示す。

3. 空間座標の2次までの多項式を用いたdeflated CG法の性能検討 / ○高谷 周平 (個人) [概要]

   近年注目を集めているdeflated CG法ではdeflation subspaceの選択が重要である. 本講演では, 偏微分方程式の近似解法でよく用いられるsubdomain deflation法をオープンソースの構造解析ソフトFrontISTRに実装し, 各subdomainに係数行列の零空間, 定数関数, 座標の1次及び2次の関数を割り当てて得られる計5種のdeflation subspaceの比較検討を行う.

4. 融合積和演算を利用した特異値分解のための両側ヤコビ法の実装について / ○荒木 翔 (京都大学), 高田 雅美 (奈良女子大学), 木村 欣司 (福井大学), 中村 佳正 (京都大学) [概要]

   特異値分解のためのヤコビ法は, すべての特異値と特異ベクトルを高い精度で計算することができる. ヤコビ法には, 片側および両側ヤコビ法が提案されており，このうち片側ヤコビ法は, LAPACK に既に実装されている. 一方で両面ヤコビ法の実装には, 改善できる部分がいまだ多く残されている． 本講演では融合積和演算を利用した両側ヤコビ法の実装を示し，片側ヤコビ法との計算精度の違いについて述べる．

1. ◎深層ニューラルネットにおける加算と結合のスキップ接続の対応 / ○長瀬 准平 (芝浦工業大学大学院理工学研究科), 石渡 哲哉 (芝浦工業大学システム理工学部) [概要]

   現代において，深層ニューラルネットを用いた機械学習は，コンピュータサイエンスの必要不可欠な技術となりつつある．一方で，新たな手法は実験結果などの経験則に基づいて提案されることが多く，体系的な理論は未だ確立されていない．本研究では，近年のニューラルネットがもつ特徴の一つであるスキップ接続に着目し，先行研究であるResNetやDenseNetで用いられたスキップ接続の演算に対応関係を得る．

2. 双対平坦多様体における自己双対測地線に基づく双対葉層化 / ○熊谷 敦也 (日本大学商学部) [概要]

   双対平坦多様体では、任意の２点に対し、e-測地線およびm-測地線を考えることができるが、特別な方向でこれらが一致する場合がある。このような測地線による双対葉層化では、任意の２点間のダイバージェンスから、射影により部分多様体間のダイバージェンスが抽出される。例として、多変量正規分布からなる多様体および多項分布からなる多様体におけるダイバージェンスの分解を取り上げ、多数の確率分布に対する次元縮約に適用できることを指摘する。

3. ◎Filippovの方法の特徴付けについて / ○須田 智晴 (京都大学大学院人間・環境学研究科) [概要]

   区分的に連続なベクトル場は様々な状況で現れる。しかし、その解の概念を定義することは自明な問題ではなく、いくつかの方法が提案されている。なかでも、応用上よく用いられるのは凸結合に基づくFilippovの方法である。本研究では、このFilippovの方法を幾何的な条件によって特徴づけることで、その基本的な仮定を明らかにする。

4. ルジャンドル陪関数の変形と応用１３ / ○田川 昭夫 (なし) [概要]

   ルジャンドル陪関数Ｐｎ+ｍ.ｍを変形すると、 Ｒｎ.ｍ（ｃｏｓθ）*（ｓｉｎθ）＾ｍの形になる。 球体の軸対称の外部流れを、ストークス近似で解く。 ρδＶ/δｔ項を、ρωＶとおくと、非同次ヘルムホルツ式となる。 粘性圧力が打消し合う２つの非同次ヘルムホルツ解を選ぶと、 境界に適したポテンシャル流型の解を得る。 Ｒｎ.ｍの漸化式を応用して、 境界条件を満足する解と、抗力を求める。

1. 時間遅れフィードバック法を用いた決定論的拡散の制御 / ○小林 幹 (立正大学), 安東 弘泰 (筑波大学) [概要]

   カオス制御の手法の中で理論・応用問わず最も広く研究されている手法の一つは遅れ時間フィードバック法である。本講演では、この遅れ時間フィードバック法を確率過程の拡散現象に適用する方法を紹介し、それをカオス力学系において典型的な現象である決定論的拡散に用いた結果を報告する。

2. Stochastic bifurcation in a turbulent swirling flow / ○佐藤 譲 [概要]

   We report the experimental evidence of the existence of a random strange attractor in a fully developed turbulent swirling flow. By defining a global observable which tracks the asymmetry in the flux of angular momentum imparted to the flow, we first reconstruct the associated turbulent attractor and then follow its route to chaos. We show that the experimentally observed attractor can be modeled by stochastic Duffing equations, that match the quantitative　properties of the experimental flow, namely, the number of quasi-stationary states and transition rates among them, the effective dimensions, and the continuity of the first Lyapunov exponents. Furthermore, a random map extracted from the experimental time series exhibits qualitatively same stochastic bifurcation as the experimentally observed transitions. Our findings open the way to low-dimensional dynamical system modeling of systems featuring a large number of degrees of freedom and multiple quasi-stationary states.

3. ◎あるシンプレクティック写像のAnosov性について / ○大久保 健一 (京大情報), 梅野 健 (京大情報) [概要]

   ハミルトニアンから時間反転対称性を保存するように生成したtan関数を用いたシンプレクティック写像について議論する. この写像が局所不安定になる時, Anosov写像となることを証明する. これによって, この写像が局所不安定となるようなパラメータの範囲で, 測度0の集合を除いた集合上で定義された初期密度関数がSRB測度に対応する平衡密度関数に収束することを示す.

4. ◎Homoclinic bifurcation in plane Couette flow / ○LUSTRO JULIUS RHOAN (OSAKA UNIVERSITY) [概要]

   The past two decades saw the extensive use of dynamical systems theory in fluid mechanics, especially in attempting to give theoretical explanation on the problem of transition to turbulence in wall-bounded shear flows (boundary layer, square-duct flow, circular-pipe flow, plane Poiseuille flow, and plane Couette flow). In this study, we investigate the bifurcation scenario in plane Couette flow with a slightly longer streamwise period than the minimal unit by Kawahara & Kida (2001). Here we show the presence of homoclinic bifurcation in this plane Couette flow, which is the earliest of such outcome for a system that is governed by the Navier-Stokes equation.

1. 平板物体の3次元落下運動シミュレーション / ○宮尻 拓 (立命館大学), 藤田 宜久 (立命館大学), 仲田 晋 (立命館大学) [概要]

   紙や葉っぱのような平たい物体を空中で落下させると、真っすぐは落下せずにひらひらと独特の軌跡を描きながら落下する。この運動は、落下空間が2次元の場合は物理シミュレーションとして再現できている。しかし、3次元空間の場合は物理現象としてのシミュレーションは実現していない。そのため平板の3次元落下運動を一般運動方程式として記述し、落下運動としての妥当性を検証する。

2. 漸化式動的グループ化によるBlock GWBiCGSTAB法の収束性・近似解精度改善 / ○多田野 寛人 (筑波大学) [概要]

   複数右辺ベクトルをもつ連立一次方程式の反復解法であるBlock GWBiCGSTAB法は，複数ステップ分の漸化式更新量をグループ化することで近似解精度向上を図ったBlock BiCGSTAB法の改良法である．同法の収束性と近似解精度はグループ化周期の設定に大きく依存し，解く問題によっても有効な周期設定は異なることから，その設定は困難である．本発表では，同法の漸化式動的グループ化手法を開発し，収束性・近似解精度両面の改善を試みる．

3. ◎並列処理を前提とした通信回避Krylov部分空間解法の収束特性と性能評価 / ○松元 朗 (東京工科大学大学院), 藤田 宜久 (立命館大学), 伊東 拓 (日本大学), 阿部 邦美 (岐阜聖徳学園大学), 生野 壮一郎 (東京工科大学) [概要]

   Krylov部分空間法は主に行列ベクトル積と内積で構成されており並列化が容易である一方，各反復において内積を数回計算するため集団通信が頻発する．集団通信は並列化効率を低下させる要因であるため，通信回避アルゴリズムによって並列化効率を向上させる手法が研究されている．本研究では残差に単調減少性のあるMrR法の通信回避手法を提案し，k-Skip CG法との比較を行い，収束特性と並列化効率の評価を行う．

1. ◎行列式の次数計算による重み付き線形マトロイド交差アルゴリズムについて / ○古江 弘樹 (東京大学情報理工学系研究科数理情報学専攻), 平井 広志 (東京大学情報理工学系研究科数理情報学専攻) [概要]

   本研究では、Hirai(2018)による一般の非可換変数付き多項式行列の行列式の次数を擬多項式時間で求めるアルゴリズムを，重み付き線形マトロイド交差問題に対応する多項式行列に対して改良し，このような行列の行列式の次数を強多項式時間で求めるアルゴリズムを提案した．さらに，本アルゴリズムとFrankの重み付きマトロイド交差アルゴリズムとの対応関係を明らかにした．

2. ◎スパイダーメトリック上での r-gather クラスタリング問題に対する FPT アルゴリズムと NP 困難性 / ○隈部 壮 (東京大学・理研 AIP), 前原 貴憲 (理研 AIP) [概要]

   メトリック上に与えられた点集合をどのクラスタも r 個以上の点を含むように分割する方法のうち、クラスタの直径の最大値が最小になるようなものを求める問題を r-gather クラスタリング問題と呼ぶ。本研究では、メトリックが一点から伸びる複数の半直線の和集合で表される場合に対し、半直線の本数のみをパラメータとする FPT 時間のアルゴリズムと NP 困難性の証明を与えた。

3. ◎無制約XOS関数最大化に対する最適近似アルゴリズム / 河瀬 康志 (東京工業大学), 小林 佑輔 (京都大学), ○山口 勇太郎 (大阪大学) [概要]

   いくつかの加法的な集合関数の最大値を取る形で表現できる集合関数は，XOS関数と呼ばれ，劣モジュラ関数などを含むことが知られている．本講演では，関数値オラクルで与えられたXOS関数を最大化する問題を考え，最適な近似比を達成する多項式時間アルゴリズムを提案する．

4. ◎群ラベル制約付き最短路問題に対する強多項式時間アルゴリズム / ○山口 勇太郎 (大阪大学) [概要]

   群ラベル付きグラフにおける制約付き最短路問題に対し，制約に用いられる群に依らない強多項式時間アルゴリズムを提案する．この結果は，「無向グラフで最短奇数長パス（or 閉路）を効率的に計算できる」ことと，「曲面埋め込みグラフで最短非可縮閉路を効率的に計算できる」ことの背後にある組合せ的な扱いやすさを，共通の枠組みで捉えている．

1. ◎Barron評価を達成するニューラルネットの構成法 / ○園田 翔 (理研AIP) [概要]

   特徴量写像$phi(x;a)$の重み付き積分$\\\\\\\\int \\\\\\\\phi(x;a) d \\\\\\\\mu(a)$で表される学習モデル（浅い学習モデル）に対して，有限データから重み（パラメータ分布）$\\\\\\\\mu$の推定と離散近似を同時に行う方法を提案する。カーネル求積を用いることで，Barronによる理論的な近似誤差評価と同等のレートを達成する。

2. 識別問題に対する高次元ニューラルネットの勾配降下法の大域収束性と汎化性能解析 / ○二反田 篤史 (東京大学), 鈴木 大慈 (東京大学) [概要]

   深層学習モデルを含む高次元ニューラルネットは多大な成功を収めているが，その成功の理論的裏付けを得る為には次の二つの問題を解決する必要がある：(I)非凸最適化問題に対する最適化手法の大域収束性，(II)データが完全フィット可能な状況下での汎化誤差保証． これらは機械学習コミュニティにおける重要な問題であるが，Neural Tangent Kernel (NTK)と呼ばれるニューラルネット由来のカーネルの解析を通して部分的に解決され始めている．本発表ではまず，NTKについての関連研究を概説する．回帰問題を対象とする既存研究ではNTKの正定値性が大域収束性の為の重要な役割を担うが，識別問題ではNTKによるデータの識別可能性がより本質的な仮定である事を本研究で示す．更にこの仮定の下で，既存研究の結果に比べ極めて現実的なサイズの二層ニューラルネットに対して勾配降下法の大域収束性と汎化誤差評価を与える．

3. 機械学習を利用した結晶界面構造決定と物性の予測 / ○溝口 照康 (東大生研), 清原 慎 (東大生研), 大谷 龍剣 (東大生研) [概要]

   材料開発を加速させるためには界面や表面などの構造解析が不可欠である．発表者らは機械学習を利用した構造解析法の開発を行っている．本発表においては，機械学習を活用した１）結晶界面構造および物性の解析と，２）スペクトル解析に関して発表する予定である．

4. パーシステントホモロジーと機械学習の組み合わせによるデータ解析 / ○大林 一平 (理化学研究所 AIP) [概要]

   本講演では講演者の最近の研究であるパーシステントホモロジーと機械学習の組み合わせによるデータ解析について講演する。この2つの組合せによってデータの特徴的幾何的パターンを発見することが可能となる。さらにパーシステントホモロジーの逆解析という道具を用いることでこのパターンを元データにマッピングすることも可能である。本講演ではこの手法の材料科学への応用についても話したい。

1. ABS方程式系とガルニエ系からの六角格子上の離散冪函数の導出 / ○梶原 健司 (九州大学), 中園 信孝 (東京農工大学), 増田 哲 (青山学院大学), Joshi Nalini (シドニー大学) [概要]

   正方格子上の離散冪関数（Bobenko, 2001)はパンルヴェVI方程式のベックルント変換の一部として現れる偏差分方程式系で記述され、パンルヴェVI方程式の超幾何τ函数を用いた明示公式が成立する（Ando-Hay-Kajiwara-Masuda,2014)。本講演では六角格子上の離散冪函数(Bobenko-Hoffmann-Suris,2002)について考察し、それを定める偏差分方程式系が4次元超立方体上のABS方程式系(Q1,H1)とその対称簡約から得られることを示す。また、それが2変数ガルニエ系のベックルント変換の一部であることを示す。

2. ユークリッド幾何に基づく離散対数型美的曲線の実装 / 井ノ口 順一 (筑波大学), ○梶原 健司 (九州大学), 三浦 憲二郎 (静岡大学) [概要]

   これまで、対数型美的曲線（LAC)を相似幾何の枠組みで、オイラーの弾性曲線の相似幾何類似として特徴付け、拡張を行ってきた。特に、可積分離散化ではセグメント間の角度を一定としてセグメント長を調整して形状を生成するが、与えられた境界条件に対し曲線を生成可能な条件がしばしば厳しすぎる。特に、変曲点が必要な場合に相似幾何では対応できない。本講演ではユークリッド幾何と相似幾何での離散曲率円の対応関係を手がかりに、離散LACのユークリッド幾何の下で定式化を提案し、その実装を行った結果を報告する。

3. 糸のたわみ問題と離散ソボレフ不等式の最良定数 / ○山岸 弘幸 (都立高専), 永井 敦 (津田塾大) [概要]

   糸のたわみの境界値問題の離散問題を考える．境界条件は両端ディリクレ，両端ノイマン，ディリクレとノイマン，周期境界条件の４つとした．それぞれの条件の離散ラプラシアンを導出し，逆行列であるグリーン行列と一般化逆行列である擬グリーン行列を求めた．グリーン行列と擬グリーン行列はあるベクトル空間で再生核となり，その応用で離散ソボレフ不等式を得る．離散ソボレフ不等式は糸のたわみの最大幅をたわみの位置エネルギーの定数倍で評価する不等式である．定数倍の内，最も小さい定数である最良定数はグリーン行列と擬グリーン行列の対角成分の最大値で与えられる．

4. ロジスティック不等間隔差分方程式による欠損データ対処法 / ○佐藤 大輔 (NTTネットワーク基盤技術研究所), 松村 龍太郎 (NTTネットワーク基盤技術研究所) [概要]

   ロジスティック曲線を用いた予測において欠損値が含まれることがある。従来は欠損値に関係するデータすべてを削除する削除法か欠損値をラグランジュ補間などで補間する補間法によって対処しているが推定精度の劣化やノイズの混入の問題があった。本稿では不等間隔差分方程式を用いることでデータ削除なし、補間なしで精度向上を行えることを実データにより示す。

1. 分子動力学における共有結合ポテンシャル剛性行列の不定値性について / ○鷲尾 巧 (UT-Heart研究所/東京大学), 久田 俊明 (UT-Heart研究所) [概要]

   分子動力学においては、共有結合ポテンシャルの大きな剛性が時間ステップ幅の制約となっている。そこで時間ステップ幅を大きくとるために共有結合長を拘束したり、剛性を陰的に考慮する準陰解法が考えられる。しかし、結合長が自然長よりも短い場合の剛性行列は動径に垂直な接線方向に負の固有値を有するのでその効果は限られる。ここでは、このような困難を克服する解法を考える。

2. ◎粒子法を使用した電子状態計算 / ○廣野 史明 (法政大), 岩沢 美佐子 (法政大), 狩野 覚 (法政大), 善甫 康成 (法政大) [概要]

   粒子法を使用して電子状態を計算する手法を開発している。量子的な波束を任意の位置に配置可能な粒子（計算点）を用いて記述する。またBohm形式を使用することで波束の動きに合わせ粒子を移動させることができる。粒子は解析対象に合わせて配置することで不要な計算を最小限にする。調和ポテンシャルの中での固有状態を使用して解析解との比較を行い精度に遜色がないことが分かった。講演では応用例についても述べる。

3. 遅延ピボットと内部反復改良を用いた大規模疎行列の高精度直接法 / ○鈴木 厚 (大阪大学 サイバーメディアセンター) [概要]

   半導体問題のドリフト拡散方程式の離散化で得られる大規模疎行列の条件数は非常に大きくなることが知られている. 疎行列の直接法では演算量を減らすオーダリングとLU分解の安定性を確保するピボット軸選択が重要である. nested-dissection オーダリングに対角軸選択を用い, 分解途中に表れる極端に小さな対角成分を分離する遅延ピボットを導入することで並列計算が可能かつ安定したアルゴリズムが得られる. 条件数が非常に大きい場合は4倍精度演算が必要となるが, 長い計算時間を要する. 遅延ピボットの発生前の部分に倍精度演算のLU分解に基づく反復改良を施し, 遅延ピボットからなる最後のSchur補行列に4倍精度演算によるLU分解を適用することで高速演算が可能になる.

4. 動的モード分解のノイズ除去の効果に対する統計解析 / ○相島 健助 (法政大学) [概要]

   多次元時系列データに対する有力な解析手法として動的モード分解が近年注目されている．データの特徴を捉え，ノイズの除去を行うことを目的に特異値分解が用いられるが，特異値分解の対象とするデータ行列の与え方はいくつか異なる方法がある．本発表では，ある種の行列の特異値分解を行う場合に着目し，統計解析により，サンプル数の増加に伴うノイズ除去の効果の定量的な評価を与え，動的モードへの収束を理論保証する．

1. 連結ピン組織構造に伝達長の小さい関係を追加するモデル / ○澤田 清 (流通科学大学) [概要]

   高さHの完全K分木の全兄弟を隣接化した完全K分木型連結ピン組織構造に対して，同じ階層の2メンバー間に伝達長の小さい関係を追加するモデルを提案する．すなわち，完全K分木型連結ピン組織構造の各辺の長さ1に対して，追加辺の長さをL(0＜L＜1)とする．ここでは，辺を追加したときの総頂点間短縮経路長を定式化し，最適な辺追加位置について考察する．

2. 有限離散確率分布族の指数型測地線系の可積分性と平均化Hebb型学習方程式への応用 / ○上野 嘉夫 (京都薬科大学) [概要]

   有限離散確率分布族は古典統計多様体の典型例であり，指数型測地線はその重要オブジェクトであり２階常微分方程式に従う．統計多様体の余接バンドル上に指数型測地線を記述するハミルトン系が構成可能で，その系は可積分であり陽な解表示を持つ．同時に，このハミルトン系は平均化Hebb型学習方程式族のハミルトン形式と解釈可能である．これらの大域的な解析にはシンプレクティック簡約化法が活用される．

3. ◎ネットワーク最適化問題の双対理論から導くmin-plus行列式の別表現 / ○西田 優樹 (同志社大学大学院理工学研究科), 渡邉 扇之介 (小山工業高等専門学校), 渡邊 芳英 (同志社大学理工学部) [概要]

   min-plus代数とは，加法として2数の最小値をとる演算，乗法として2数の和をとる演算をもつ半環である．min-plus代数上の行列式は通常の線形代数の場合と同様に定義されるが，それは割り当て問題というネットワーク最適化問題に等しいことが知られている．本講演では，割り当て問題の双対を考えることにより，min-plus行列式の新たな表現を与える．さらに，この表現を用いることでmin-plus行列の積の行列式に関する性質を示す．

4. ◎双向臨界グラフの構成的特徴付け / ○喜多 奈々緒 (東京理科大学) [概要]

   双向グラフとは無向グラフの各枝の各端点に + または − の符号が割り当てられたものであり，これは有向グラフおよび符号グラフの共通の一般化である．双向グラフは1970年に Edmonds らによって様々な最適化問題に統一的な定式化を与えるために導入された． 本研究では，双向グラフにおける有向小道に関する強連結理論を構築することをねらいとし，ラディアル（radial）の概念の導入およびその構成的特徴付けを与える．これは Lovász による因子臨界グラフの特徴付けを含む．

1. 陰関数曲面による発泡金属のソリッドモデル生成 / ○花岡 佑哉 (日本大学大学院生産工学研究科), 伊東 拓 (日本大学生産工学部), 仲田 晋 (立命館大学情報理工学部), 渡辺 圭子 (立命館大学理工学部) [概要]

   Closed Foamにおける発泡金属のモデリングにおいて，我々は陰関数曲面を用いた方法を提案している．同方法によって生成された曲面モデルにDelaunay分割を適用することで，壁部分が四面体分割されたソリッドモデルを生成できる．しかしながら，生成したソリッドモデルには不要な面が生じる場合がある．本発表では，陰関数の性質を利用することで不要な面を取り除き，有限要素法に適用可能なソリッドモデルの生成方法について示す．

2. 蛍光顕微鏡によるDNA画像のための画像処理技術の開発 / ○大谷 寛明 (核融合研、総研大), 松元 朗 (東京工科大), 生野 壮一郎 (東京工科大), 剣持 貴弘 (同志社大), 中村 浩章 (核融合研、名大), 波多野 雄治 (富山大), 藤原 進 (京都工繊大) [概要]

   トリチウムによるDNA二本鎖切断の機構を定量的に明らかにするため、蛍光顕微鏡によるDNA一分子観察法によってDNA二本鎖切断速度の定量評価を進めている。二本鎖切断定量評価のため、DNA長を自動的に計測する画像処理法を開発している。原画像からノイズを除去し、自動閾値法により2値化した後、骨格線の抽出を行い、長さを計測する。DNAの重なりがなければ、問題なく自動計測ができるが、重なりがある場合はまだ検討の余地がある。UnityやPythonを使った機械学習を行うなど、現在の開発状況について報告をする。

3. Visual Analytical System for Analyzing State-Transition in Dynamical Systems / ○WANG TING (京都大学大学院　工学研究科), 夏川 浩明 (京都大学学術情報メーディアセンター), 小山田 耕二 (京都大学学術情報メーディアセンター) [概要]

   In a dynamical system, the trajectory of a system state draws a figure called attractor on phase space. An approach that understands and predicts a system by representing time series data in this space is effective in analyzing nonlinear dynamics of phenomena. However, since the attractor can be high-dimensional and complex, it is difficult to interpret the correspondence with variables and the shape of high-dimensional. Therefore, we identify system states from multiple time series data, and propose state-transition graph that represents the transition of the state along a trajectory. State-transition graph is an abstract representation of data on the phase space. We also proposed a visual analysis system that supports comparison and understanding of state transitions by realizing linked visualization in combination with state-transition graph, attractor viewer, time series representation of states, and dimension reduction plots. Applying this method to well-known ecological model data, it was confirmed that our proposed system enables users to understand and compare data effectively, brings us to a new perspective on data.

4. ヘリカル核融合炉における磁力線の可視化 / ○胡 昆祁 (京都大学小山田研究室), 小山田 耕二 (京都大学), 大谷 寛明 (NIFS) [概要]

   ヘリカル装置は磁場を利用して、プラズマの流れを制限し、極端な温度の上で、核融合をさせる装置です。装置はドーナツのような形ですが、決してスムーズな表面を持つものではありません。その中色んなコンポーネントがあります。プラズマの流れとのぶつかりに避けないと、核融合は失敗になります。というわけで、磁力線からプラズマの流れを表して、3Dモデルにすれば、装置内部の情報をより簡単に把握することができます。必要に応じて磁場の強さを変えて、プラズマの流れを調整することができます。

1. ◎On pseudo-randomness of digraphs and ranking tournaments / ○佐竹 翔平 (神戸大学 大学院システム情報学研究科) [概要]

   Pseudo-randomnessは, 所与のダイグラフがいかにランダムダイグラフに「近い」かを表す尺度です. 特に, 隣接行列が正規行列となる正則ダイグラフに関しては, pseudo-randomness をその隣接行列の固有値で表現できます. この性質に着目して, これまでグラフ理論の様々な問題に対するアプローチが行われてきました. 本講演では,トーナメント (完全グラフの向き付け)のランキング付けの問題への, 固有値に着目したPseudo-randomnessの応用に関する結果を報告します.

2. 非正な曲率をもつ束と半束のクラスについて / ○平井 広志 (東京大学) [概要]

   階層的な半順序集合Pの順序複体には，ある自然なメトリックを入れることができる．そうして得られる距離空間をPのオーソスキーム複体という（Brady-McCammond 2010）．発表では，非正な曲率をもつ，すなわち，CAT(0)空間となるオーソスキーム複体をもつ半順序集合を特徴付けるという未解決問題に対して，応用数理の観点からのモチベーションや既存の結果と新しく得た結果について述べる．

3. ホッジランクを用いた選好意識データからのネットワーク構築 / ○谷口 隆晴 (神戸大学，JST さきがけ), 小松 瑞果 (神戸大学) [概要]

   近年，複雑ネットワークの解析が注目されているが，解析対象のネットワークは，様々なデータを加工することで構築されており，解析結果は構築手法に大きく依存するため，ネットワーク構築手法の開発が重要となる．本研究では，組み合わせ的ホッジ理論を用いたランク付け手法であるホッジランクを利用した，選好意識データからのネットワーク構築手法を考案する．

1. FreeFEM 講習会　– 変分不等式の数値解法 / ○鈴木 厚 (大阪大学 サイバーメディアセンター), 高石 武史 (武蔵野大学) [概要]

   変分不等式は弾性体の接触問題の数学的モデルに現れる. 例えば, 弾性体が壁面境界にめり込まないように変位に不等式制約を課すエネルギー最小化問題として定式化される. 本講習会では簡単のため対象とする問題をスカラー値の二階の楕円型方程式とし, 変分不等式の数値解法を2種類, 不等式条件のための微分不可能性を緩和するセミスムースNewton法をFreeFEMスクリプトで記述する方法と, 離散化後の非線形最適化問題を主双対内点法で解くIPOPTソフトウェアをFreeFEMから利用する方法について解説する.

1. 和型のmax-plus方程式の数理モデル / ○高橋 大輔 (早稲田大学) [概要]

   ある範囲の近傍の状態値の和に依存するmax-plus方程式について、どのようなメカニズムが表現できるかなついて講演する予定である。

2. 一般化離散BKP方程式から導かれる混合ソリトン解について / ○長井 秀友 (東海大学), 新澤 信彦 (西日本工業大学) [概要]

   本講演では2種類の異なるソリトン解が混在した解を持つ離散ソリトン方程式を紹介する．この方程式は一般化離散BKP方程式にリダクションを行うことで導かれ，特別な場合として離散KdV方程式を含む．講演では混合ソリトン解の超離散対応物の時間発展ルールについても紹介をする．

3. ◎交通流を記述する非線型離散モデルの構成とルール184FuzzyCAの超離散解析 / ○東 康平 (東京大学大学院数理科学研究科), 薩摩 順吉 (武蔵野大学工学部数理工学科) [概要]

   交通流を記述する局所相関をもつ非線型離散モデルを構成した．このモデルは，ルール184FuzzyCAの発展方程式である．ルール184CAではみられなかった構造を超離散解析を交えて紹介したい．また，可積分な大域相関をもつモデルへの拡張についても説明したい．

4. アフィン型ミューテーションの可積分性について / ○野邊 厚 (千葉大学), 松木平 淳太 (龍谷大学) [概要]

   ランク2のクラスター代数においては、有限型・アフィン型ミューテーションから導かれる双有理写像力学系は可積分となるが、その他（strictly hyperbolic型）は非可積分となる。本講演においては、ランク3以上のクラスター代数においても同様の主張が成り立つかどうか議論する。

1. ◎行列実数乗の計算に対する数値積分法のための前処理について / ○立岡 文理 (名古屋大学), 曽我部 知広 (名古屋大学), 剱持 智哉 (名古屋大学), 張 紹良 (名古屋大学) [概要]

   数値積分法による行列実数乗A^αの計算を考える．これまでに，数値積分法の収束速度向上のための定数倍の前処理が考えられてきた．これは，正の実数pに対してA^α=p^(-α)(pA)^αが成り立つことを用いて，収束速度が向上するようなpを選ぶものである．本発表では正の実数の代わりに行列を用いた前処理を考える．すなわち，A^α=P^(-α)(PA)^αが成り立つ行列Pを用いて計算効率の向上を試みる．正定値対称なAに対してPの選び方を提案し，数値例を通して有用性を検証する．

2. Fast validation for the Perron pair of an irreducible nonnegative matrix / ○Miyajima Shinya (Iwate University) [概要]

   Fast algorithms are proposed for calculating error bounds for a numerically computed Perron root and vector of an irreducible nonnegative matrix. Particular emphasis is put on the computational efficiency of these algorithms which has only square complexity under an assumption. We introduce a technique for obtaining smaller error bounds. Numerical results show efficiency of the algorithms.

3. 有理関数の合成による伝達関数の改良とそれに対応するフィルタの構成について / ○村上 弘 (首都大学東京) [概要]

   有理関数であるフィルタの伝達関数に対して，その遷移域の幅を狭める変換を行う有理関数を合成することにより，弁別の鋭さを増した伝達関数を表す有理関数が得られる．これまでその変換に用いる有理関数あるいは多項式として，電気回路の典型４種のうちでバターワース型，チェビシェフ型，逆チェビシェフ型と呼ぶ３種に倣ったものを採用して構成されるフィルタを具体的に示してきた．今回は残っていた楕円型を採用した構成を示す．

1. 確率微分方程式の弱い近似で使用される近似正規確率変数について / ○齊藤 善弘 (岐阜聖徳学園大学経済情報学部), 中島 貴志 (岐阜聖徳学園大学大学院M2) [概要]

   確率微分方程式の弱い近似スキームで使用する確率変数は正規確率変数である必要はなく、 それを近似する確率変数で十分であることが知られている。 講演では種々の近似正規確率変数を提案し、 数値的安定性の観点で議論する。

2. ◎辞書式順序におけるブーリアングレブナー基底の再帰生成アルゴリズム / ○佐川 嘉信 (芝浦工業大学大学院理工学研究科), 井戸川 知之 (芝浦工業大学システム理工学部) [概要]

   ブール環Bを係数にもつ多項式環B[X]に冪等性を導入した剰余環B(X)をブール多項式環という．ブーリアングレブナー基底はB(X)上のグレブナー基底であるが，多くの場合その構成はB[X]上の計算に基づく．我々は，B=Z_2及び辞書式順序に限定して，Z_2(X)上の計算に基づいた再帰的な構成方法と，そこから得られる再帰的な簡約手法を考案した．本講演ではこれらの手法を紹介し，従来手法との比較についても触れる．

3. 境界フィードバックループに無駄時間要素を含む1階双曲型システムの安定性解析 / ○佐野 英樹 (神戸大学) [概要]

   本講演では，境界フィードバックループに無駄時間要素を含む1階双曲型システムの安定性について論じる．我々の先の研究では，無駄時間要素を輸送方程式で置き換えた後にポート・ハミルトニアンの手法を用いて，システムが指数安定になる条件を導出したが，そこでは無駄時間が小さい場合が除外されていた．本講演では，任意の無駄時間に対して，閉ループ系の安定性が保証されるフィードバックゲインの上限が，ある複素関数のH無限大ノルムの計算を通して求められることを示す．

4. Convergence analysis of inner-iteration preconditioned GMRES method for least squares problems / ○Liao Zeyu (総合研究大学院大学 複合科学研究科 情報学専攻), 速水 謙 (国立情報学研究所/総合研究大学院大学 複合科学研究科 情報学専攻) [概要]

   We will explain the super-linear convergence of the inner-iteration preconditioned GMRES method for least squares problems, by considering the effect of clustered eigenvalues of the preconditioned coefficient matrix. We show that the theoretically predicted convergence behavior matches numerical experiment results.